五月病院(五月病で入院をしてはいけない話)


「ここが、五月病院か……」


 ボロボロで古い外観と、五月病院という看板が目に入る。


 僕は学校の新しい環境になじめず、心と体に不調が出るようになってしまった。


 いわゆる五月病である。


 そのような体調不良が長く続いているので、僕は医者に診てもらうことにした。


「君、専門の医療機関に入院した方がいいよ」唐突にお医者さんから入院を勧められる。


 これ以上、五月病のせいで学業を疎かにしたくない僕は入院を決意した。


「この五月病院では、休養するだけで治るらしい」


「よし、ちゃんと学校に行けるように頑張るぞ!」


 しかし、ベッドで僕は治療に励むが、一週間ほど入院しても心身の不調は良くならず、むしろ悪化していく。


「五月病が全く治らない…?」


 不思議に思い、スマホで五月病院を調べてみると、五月病院という医療機関は存在しないことに気づいた。


「うわぁぁ!」


 僕は奇妙な現象に恐怖して、声を上げた。


「大丈夫ですか?」


 五月病院の看護師さんが、僕の叫び声を心配して駆け寄ってくる。


「こ、来ないで…」


「はぁ、気づかれちゃったか。あとちょっとだったの……」


 看護師はいきなり僕の前で態度を変えてくる。


 そして、看護師と五月病院そのものが消えてしまった。


 気がつくと、僕は何も無い広大な土地で倒れていた。


 五月病院という都市伝説が存在する。

 

 五月病で「働きたくない」「学校へ行きたくない」と思う人間の気持ちが具現化した怪異の病院。


 この病院では六月までに退院できないと、重症患者の部屋へ移され、永遠に五月病院で生活しなければならなかった。


 五月の終わりまで入院していたので、あともう少しで、僕は永久に五月病で苦しむところだった。


「五月病なんて、もうこりごりだよ……」


 なんとか五月病を克服した僕は、友人に五月病院の話をしていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る