おとう・ふ・とうこうがーる

おちゃ。

第1話 お豆腐じゃありません!


「豆腐ちゃんはさー」


チョコレート菓子を頬張り、じっとこちらを見つめて悪戯っぽく笑って見せた。


「だから豆腐じゃないっつーのー!」


私のリアクションを見て笑うや否や。


「はいはいすまんすまん」


なんて、適当に謝って済ませてくる。


「でもみなさ、今日なんかいつもより豆腐感強い。なに、水分多め?」


豆腐だの水分多めだの、相も変わらず訳のわからないことばかり言ってくる彼女は、中学から知り合った友人である笹野沙奈。


通称、ささっち。


茶髪のボブに、ぱっちり二重のいかにも可愛いを詰め込んだようなビジュアル。


…にも関わらず、ふざけてばかりでテストの平均点は5点。相当なポンコツだ。


そんなささっちの呼び名を考えたのは私ではなく、


「おっす」


いつも唐突に現れる、黒髪で短髪、一重。

声が若干低くボーイッシュで、バリバリ運動部エースな彼女。


「うおー!まゆげ!」


「誰がまゆげじゃ」


眉毛、なんて笹野にイジられているのは、石田真悠。


真悠だから、眉毛。


私はまゆちん、と呼んでいる。


毎日バッチリ決まってるツーブロ刈り上げヘア。

ヘアワックスは絶対に切らさないらしい。


彼女もまた、ささっちと同じく中学からの付き合いだ。


「ちなみに笹野沙奈、今日何の日かわかってるよね」


私が真面目なトーンで呟くと、


「当たり前すぎて前転しちゃうよ」


そう笑いながら本当に前転しようとする。


「すんなばか」


「いでっ」


まゆちんの鋭いチョップ。


最も見慣れた光景だ。


「てかなんでフルネーム!」


全員小学は別。

中学からの付き合いにも関わらず、ささっちのボケ、まゆちんのツッコミ、笑う私。

なんて、完璧にバランスが取れているのだ。


「豆腐ちゃん何時から行く?」


「だから豆腐じゃないんですけど」


「あーはいはい、みなさ豆腐」


「豆腐は余計!」


今日は町内で最も大きいショッピングモールへ、3人で行くことになっていた。


「豆腐はチャリだろ?」


「まゆちんまで!」




こうして私たちの平和な日常が、始まる。

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おとう・ふ・とうこうがーる おちゃ。 @ryokucha_cake

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