第6話 波動エンジン開発秘話、光速突破への挑戦。

放課後

 

 私は放課後は隣接する明石市立航空宇宙大学の研究室にいく。

 

 いまそこで研究しているのは宇宙空間で光の速度を超える研究。

 100年前にはワープとか呼ばれてた技術なの。

 厳密には光の速度も上げることができるから超光速通信FTLにも応用ができるんだ。


 原理はこう。

 反物質を安定して発生させることができるようになって、宇宙に満ちているダークマター[実在]の一部も対消滅させることができるようになったの。

 ダークマターの素粒子同士を繋いでいる暗黒光子(dark・photon)は比較的結合が緩く、対消滅反応で薄くすることで前後でダークマターに濃度差が生まれ、まるで海から浮上する物体のように前方に引き寄せられる。


 これまではダークマターに邪魔されて光も秒速30万キロが限度だったけど、宇宙船の先端に反物質を収束させてビームを波状に放出することで前方がまるで真の真空になり、邪魔するダークマターが薄くなることで光速を突破できるようになった、すごいでしょ。

 対消滅エネルギーは同じく波状に後方に噴出することで推力を得るの。

 昔、アメリカで鋼鉄のチューブの中を真空にしてその中を長距離移動する乗り物[実在]があったらしいけど(蒼なら昔の乗り物に詳しそうだけど)それに似た感じかな。

 これが波動エンジンの原理。

 今はまだ小さな実験機しか飛ばせないけど、わずか5分で太陽系を脱出させるまでに高速化されたんだ。

 今はまだ片道だけど双方向に飛ばせるようになったら火星くらいならほぼ遅延なしでビームを送って通信できるようになるかな。

 

 実はダークマターを反物質で対消滅させるアイデアと基礎理論は私が考えたんだ。

 日本の総理大臣賞をもらったのよ、すごいでしょ、ほめてほめて。

 だから研究室に呼ばれてるの。

 

 いまは反物質をできるだけ多く保存しておける容器の小型軽量化の研究を任されてる。

 軽量で大容量の反水素を保存できないと大きな船は動かせないからね。

 


 もうちょっと容器を薄く削ってみるか、、、

   ギュルルル!


 1時間ほどしたら蒼が迎えにきたからそろそろ帰るね。

容器の片づけは明日でいっか。


 蒼が容器を見てつぶやく

 「うーん、なんというか、芸術作品かな、、、、、」

帰りもトロバスに乗ろうかな。


蒼と私は停まっていたいたトロバスに乗り込む。


「源さん、帰りも乗せてね。」


 源さん.なんて呼んでるけど、源さんはあの源義経の末裔なんだって。

 なんでもゲノム解析でわかったらしいよ。


 トロバスは松浦明石市長が観光需要と高齢者の生活の足の確保のために導入したらしいのよ。

 タイヤで走るけど無軌条電車免許という電車の免許(動力車操縦者運転免許、国土交通省が発行)がいるからマニアが大挙して乗りに来るんだって。


 その明石市長は例のタコのオブジェとか、大型特殊二種免許、牽引二種免許が両方必要な(日本でここだけらしい)トレーラーバスを運行させたり、運転免許試験場の街明石だから、ということらしい。

神戸900のナンバーの緑ナンバー乗用車?

[実在]

 よくわからないけど日本中からマニアがホログラム撮影に来るみたい。


 「あー、蒼が私の指定席取った!」

 後ろから蒼の頭をロックしてグリグリする。

 これがデートDV、なのか。

 しらんけど。


 乗った瞬間、頭の中にいろんな風景や音、匂いまで自動的に再生される。

 これは人のストレスまで解消する効果があるんだって。


 海が近くなると少しアンモニアの臭いがしてくる。

 今は海に浮かぶ大型船舶の燃料はアンモニアを使ってる。

 なぜか内燃機関も現存していて二酸化炭素を出さないアンモニアが大型船の燃料[実在]となってるんだ。

 タクシー(乗用ドローン)に使ってるエナジーフィラーをたくさん積んだら大型船もそれでいけるような気もするけど。

 核融合エナジーフィラーは暴走することもないし。

 でも何か理由があるんだろうな。

 政治的理由とか。


 その間に色褪せた赤いタコのオブジェは後ろに消えていった。


 

 今回の物語の中に重要なカギとなる記載が隠されている。

 もう運命の流れは変えられないところまで押し寄せている。

 次回、破滅を防ぐことができるのか?

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