第7話 超高度AI市長とAI市民市議会
自宅にて。
「ただいま。」
「おうおかえり薫子。」
お父様が出迎えてくれた。
「Gは市役所に渡して来たぞ、5万円で引き取ってくれたわ。」
Gとは昆虫サイボーグのこと。
自動でコンセントから電気を盗んで動く野良昆虫ロボット、グローバルサーチャーインセクト略称「GSI」のこと。
先の世界大戦で諜報合戦に使われた昆虫型偵察兵器の生き残り、負の遺産なんだ。
まだ世界中に10億匹以上這いまわってる。
考えるだけでゾッとするわね。
「お父様、もうお仕事終わったの?」
「ああ、今日は市議会の議事録のことで例のAI市長から呼び出されたよ。」
お父様はAI市長の補佐官なんだ、AI市長には身体がないから一部の業務はお父さんがやってる。
AI市長は20年前の市長選挙で当選した松浦市長の思考や記憶を移植したハイブリッド超高度AI市長だ。
松浦市長の脳から「全脳エミュレーション」技術によるマインドアップローディングによって人間のシナプスの振る舞いまで半導体で再現したもの。
松浦市長はもう引退して松陰でのんびり過ごしてるようだけど。
明石市議会はもう議員というものはいない。
15歳以上の市民全員の思考パターンや主義主張、記憶を備えた仮想市民全員と市長が一秒間あたり10万回の市議会を行い、24時間でのべ86億4000万回の議論を行ってその中から全員一致できる政策の最適解を出してくる。
究極の民意反映とも言えるかも。
お父様たち補佐官は、それを現実世界に反映、適合させるのがお仕事だ。
だから明石市民は皆政策に異議は唱えない。
AIが人間を超えるシンギュラポイントの到来が現実のものになったの。
波動エンジンのアイデアも「私」を移植したAIの3人?が何億回もアイデアを出し合って出て来たもの。
分身AIを使うのは友達もみんなしてるけど波動エンジンのアイデアの基礎理論を出せたのは私のAIだけ、もっと褒めて褒めて。
と脳内?会議してみる。
お父様は流石に疲れたのか、ご飯も食べずに寝ちゃった。
今日はお母様が食事当番だからまあいいけど。
お母様と二人で美味しいもの作って食べちゃおっかな。
今夜は日本人のお父様いないからイングランド風のご馳走にしよっと。
旧プ連(プルチノフ連邦)の穀倉地帯が世界大戦で壊滅してから小麦が手に入らなくなってコテージパンは2個で1万円くらいする高級品だけど、お父様に内緒で買って来て食べちゃおっと。
次回、失われた小型諜報兵器が暴走する。
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