暴風

 大きな被害を起こす強い風の事を言う。


 足の遅い台風が日本の南西から近付いている予報図がテレビに映し出されている。


 「明日は外出られないかもな。」


 画面から目を離さずに尊が呟く。


 「呑気な事言ってないで手伝ってよ。」


 キッチンから言ってる事とは裏腹にのんびりした声で夢乃が言う。

 尊がテレビから目を離してキッチンの方を見ると、夢乃がカーキ色の半袖シャツに半ズボン、ヘルメットという出で立ちに同色の水筒を袈裟懸けにして迷彩模様のリュックに水やカップラーメンを詰め込んでいた。


 「何処か探検にでも行くのか?」


 「探検じゃなくて避難する時の準備だよ。」


 どう見てもどこぞの探検隊の格好である。


 「いや……持ち出し袋はいいけどその格好は……」


 「これ?いいでしょ。こういう時の為に備えて買ったんだよ。」


 そう言う夢乃だが、遠目にも分かる薄手の生地は機能性よりも見た目重視のコスプレ的な衣装にも見える。


 「そうなんだ。因みに何処で買ったの?」


 「ド○キ。」


 コスプレ用だった。


 「何か脇のとこメッシュになってるし涼しくていいんだよね。」


 手を挙げて脇を見せる夢乃だが、パツパツの胸元とメッシュから覗くピンク色のブラにしか目が行かない尊であった。。

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