増量

 読んで字の如く、量が増えることである。


「むぅ~……」


「……」


「ふぅぅぅむ……」


「……」


 ベッドに寝転がってスマホを弄っている尊の傍で、床に座った夢乃が唸り声を上げている。

 尊が気になってチラチラと夢乃の方に視線を向けると、夢乃は難しそうな顔をして自分の体のあちこちを触っている。


「ユメ、どうしたんだ?」


「ん~……ちょっとこのままじゃマズいかも……」


「何が?」


 良からぬ事でも起こっているのかと、尊が体を起こして夢乃の方を向いた時、夢乃はその二つのたわわな膨らみを下から持ち上げてTシャツの胸元をいつも以上に強調させているところだった。


「おっふ!?な、何してるんだ?」


「いやぁ、最近ちょっと体重増えちゃってさ。」


「お、おぅ……」


「ウエストとか脚は全然変わってないからやっぱかなぁって。」


 夢乃が更に胸の柔らかそうな膨らみを強調するかのように持ち上げつつ上目遣いに尊の方を見る。


「!?」


「肩は凝るし足元は見えにくくなるし……ホンッと邪魔。」


「そ、そうなんだ……」


「それにギュッてした時ものせいで完全に密着出来ないもんネ。」


 悪気の欠片も無い笑顔を見せる夢乃。




(それはそれで寧ろ嬉しいのだが……)

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