大寒

 二十四節気の一つで、1年で最も寒い時期の事。

 2024年は1月20日である。


 布団から出している顔に感じる冷気が、今日が一段と冷え込んでいる事を感じさせる。

 壁の時計はまだセットしたアラームが鳴る30分以上前だと気付いた尊はゆっくりと目を閉じた。


「寒い……」


「ぇ……」


 丸めた背中から聞こえてきた声に、尊はびくっと体を震わせて固まる。

 一人で寝ているベッドから自分以外の声……夏じゃあるまいし怪奇現象でこれ以上涼しくなりたくはない。

 そっと顔を浮かし、目だけゆっくりと動かして暗い室内を見渡すが、さすがに背後までは見えない。


 と、脇腹から前に回ってくる腕。


「っ!?」


 声にならない悲鳴と同時に腕が体に巻き付いてくる明らかに人肌の、すべすべした手触りの腕。


「おぃ。」


「んぇ?」


「何でユメが居るんだよ?」


「んぅ……あと5分……」


「時間は構わないから質問に答えろ。」


 こんな事が出来るのは夢乃だけだと、驚きと同時に覚醒した脳が判断すると、恐怖など微塵も感じない。


「部屋が寒くてさ……」


「だったら暖房入れりゃいいじゃん。」


「電気代勿体ない……」


「俺は暖房じゃねぇんだぞ。」


 とか言いつつ背中の温もりに天国を感じる尊だった。

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