金風

 「きんぷう」と読む。

 五行思想で秋は「金」で示されるので、つまり金風とは秋の風のこと。

 春ほどでないにしても強風が吹く場合もあり、一雨ならぬ「一風」ごとに冬の訪れを感じさせる風でもある。


 そんな少し肌寒さを感じるようになってきた頃、尊と夢乃は大学から帰宅の途中。


 「11月になってやっと秋らしくなってきたな。」


 「そだね。そろそろ冬服の準備しなきゃ。」


 そういう夢乃は上は長袖のTシャツにカーディガンを羽織っていてそれなりに秋らしい装いだが、下は絶対寒いだろと言いたくなるようなミニスカート姿。

 だがふと尊は思う。

 夢乃が長ズボンを履いたところを見た事が無いなと。


 「そういやユメっていつも脚出してるけど寒くないのか?」


 「ん?あー、そりゃこのまま真冬になれば寒いけど、まだ全然平気。」


 「けど真冬でも脚が隠れるくらいの服着てるの見た事無いぞ。」


 「んー、言われてみれば……でもデニムのパンツは履くよ。」


 確かに。

 何度か見た憶えはあるけど、そんなに記憶に残っていないのは何故だろうと尊は首を小さく捻る。


 「何にしても……」


 「ん?」


 夢乃が尊の腕を取って擦り寄る。


 「タケは脚が見えてる方がいいでしょ?」


 「!?」




 (仰る通りです。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る