残暑

 一般的には8月いっぱい続く暑さの事を言うが、9月に入っても暑ければ『残暑』だし、何なら最近では9月終盤でも暑いのだから『残暑はいつまで?』なんて問いは愚問と言わざるを得ない。


「暑いねぇ……」


 尊の部屋のソファにぐたっと寝そべっているのは勿論夢乃。

 緩めのTシャツにホットパンツという姿は夏そのものだ。


「今週いっぱい暑いって言ってたな。」


「誰が?」


「天気予報のお姉さん。」


「そっかぁ。」


 自らの熱で不快になるのか、夢乃はぐったりしながらもソファとの接地面を変える為に右へ向き左へ向きしている。


「気象予報士って難しいのかな?」


「あーまぁちゃんとした国家資格だしな。合格率5%くらいって聞いた事ある。」


「うへぇ……無理だ。」


「で、何でまた気象予報士?」


 夢乃がごろんと体を回して尊の方に向く。


「だって気象予報士だったら『もうすぐ涼しくなります』って言ったらそうなるじゃん。」


「うん……うん?」


「だから私が気象予報士になって『明日から涼しくなりますよ』って言えばこの暑さともオサラバ出来るでしょ?」


「え……っと……」


 予報士が言った通りになるんじゃなくて……と言い掛けて夢乃の得意気な顔にほっこりしてしまう尊だった。

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