湿潤

 日本は『温暖湿潤気候』なんて習った記憶はあるが、昨今では『どこが温暖だよ/湿潤にも程がある』とツッコミを入れたくなる始末。


 尊が帰宅すると、玄関にはいつもの如く夢乃の靴がある。

 同棲しているわけでもなくそれ以前に付き合っているわけでもないのに、さも当然かのように夢乃は尊の部屋へとやって来る。


 帰ったら手洗いだと洗面所の戸を開く。


「うぇっ!?」


 そこに居たのは体と頭にタオルを巻き付けただけの夢乃。


「おかえりタケ。」


「な、何やってんの?」


「え?汗かいたからシャワー浴びてたの。ダメだった?」


「い、いや、別にいいけど、何で俺んちで?」


「あー、何か自然とタケの部屋に来ちゃったから、まぁいっかと思って。」


 尊は夢乃のまだ拭ききっていない白い肌に付いた水滴や、体に巻いたタオルを押さえる程に寄せられる谷間に目を奪われてそれどころではない。


「あ、タケがえっちな目で見てる。」


「なっ!?そそそんな事は無くも無いけど……」


「まぁ、タケも男の子だもんね。それより……」


「んぇ?」


「そろそろ出てくれないとさすがに恥ずかしいかな。」


「ごっごめんっ!」


 尊が慌てて洗面所から退散する。




(「眼福だが、俺んちだっての。」)

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