梅雨

 晩春から夏に掛けて曇りや雨の日が多く現れる気象現象。

 最近は豪雨等が重なって大きな被害をもたらす事もある。


 夢乃は学生会館の外に出て、垂れ込める灰色の雲から落ちて来る雨粒を恨めしそうに見上げていた。


「ユメ、どした?」


 そこへ尊が鞄の中に手を突っ込みながら現れる。


「あぁタケ。必要なものとは言え、人によってそれを必要とするタイミングは違うって事を空に訴えてたとこ。」


「何の話?」


 尊も夢乃と同じように空を見上げる。

 見える景色は夢乃と同じだろう。

 尊は鞄の中から折り畳み傘を取り出して広げ、足を一歩前に踏み出すが夢乃は空を見上げたままだった。


「帰らないのか?」


「空が私の訴えを聞き入れないと難しいね。」


「あー、傘忘れたのか。入って行く?」


「ありがたや。」


 そう言うと夢乃は尊にぴたっと寄り添い、腕を絡めてきた。


「ちょっ!?」


「何?」


「ち、近過ぎじゃね?」


「これくらいくっついてないとびしょ濡れになるじゃん。傘小さいんだから。」


「そ、それはそうだが……」


 夢乃がぎゅっとしがみつくと、その柔らかい膨らみが尊の腕に押し付けられる。

 尊は脳のリソースを理性を保つ方向に向けるので精一杯になる。




(「もう永遠に雨でいい……」)

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