感銘

 心に刻み込んで忘れない事や忘れられない程感動する事。

 誰しも一度や二度はそういう事象に出会った事があるのではないだろうか。


「タケぇ~……」


 情けない声で尊の部屋に入って来たのは夢乃。


「ん~……んっ!?」


 レポートを作成していた尊がパソコンのモニタから目を外して夢乃の方を見て言葉を詰まらせる。

 部屋の入口に情けない表情で立つ夢乃は、白いパーカーを羽織ってはいるがその中は迷彩柄のビキニ姿。


「なな何!?」


「水着試しに着てみたんだけど、後ろが固結びになって脱げなくなった。」


 そう言って夢乃はパーカーを脱いで背中を尊の方に向ける。

 確かに結び目から絶対解けてやるものかという強い意思を感じる。


「解いてくれないかな?」


「お、おおおぅ……」


 夢乃は尊の傍に来ると背中を向けてポニーテールにしてある長い髪を肩に乗せる。


(「ユメの背中……綺麗だよなぁ……って何考えてんだオレっ!」)


「解けそう?」


「お、おぅ……なな何とかする……」


 尊は結び目に指を掛ける。


「あ……」


「え?」


「首のとこ外して回せば前に来るのか。」


 そう言って夢乃は首の後ろの蝶結びを解く。


「ふぁっ!?」


 項と背中に尊の視線が釘付けになった。




(「びゅーてほー……」)

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