動画

 最近はスマホの性能も向上し、ちょっとした撮影程度なら下手な機材を揃えるよりも綺麗な画質が得られるようになった。


 ぴろん♪


 いつものように尊がベッドの縁にもたれて本を読んでいると、何処からともなく電子音が聞こえてきた。

 本から目を離すと正面に居た夢乃が真剣な表情で尊にスマホを向けていた。


「な、何してんの?」


「ん?撮影だよ。」


「さ、撮影?何の?」


「何って、読書中のタケ。」


「そんなモン撮ってどうするのさ?」


「どうするって訳でも無いけど、どうにかして欲しい?」


「何で訊くんだよ。」


 その間も夢乃はスマホの画面から目を離さず、ずっと尊を撮影している。


「タケって結構イケメンだからさ。じっとしてても絵になるよね。」


「それはどうも。」


 尊は少し照れ臭くなって本に目線を戻す。


「そうだ。この動画をYou○ubeで配信したら収益獲れるんじゃない?」


「は?」


「イケメン好きの女子が見付けたら絶対にバズると思うんだよね。」


「頼むから止めてくれ。」


「何でさ?あ……」


 反論しかけて夢乃が口を閉ざす。


「ん?」


「世の中にタケのイケメンが広まったら私だけが見られる特権が無くなるから止めよう。」


「!?」




(「そういう事を言うからっ!」)

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