逼迫
何かに押し迫られている時、冷静な思考を保てるかどうかと、その人が冷静沈着な人物かどうかはまた別の話。
「タケ……もう私……我慢出来ない……」
「そ、そんな事言われても……」
「んくっ!」
「お、おぃっ!?」
大学の講義室で、尊は夢乃が小声で漏らす悩まし気な声に落ち着きを失っていた。
「あと少しだから我慢しろって……」
「あと少しって……ん……どれくらい?」
「長くても3分ってとこ……かな?」
「む、無理……」
夢乃は尊の隣で足を浮かせてジタバタさせつつ、救いを求めるような、緊張した表情を尊に向けている。
やがて講義の終了を知らせるチャイムが講義室に響いたのだが、夢乃は相変わらず困ったような顔を崩さない。
「終わったぞ?」
「動けない……」
「へ?」
小刻みに体を震わせる夢乃。
「タケぇ……つ、連れてって……」
「つ、連れてって……って……どうやって……?」
「おんぶでもお姫様抱っこでも何でもいいから。」
「随分余裕あるな。」
「無い……」
「振動で余計にヤバくなるんじゃないか?」
「だ、だよね……一人で行ってくる……」
そろりと立ち上がった夢乃は妙な足取りで講義室を出てトイレへと向かった。
(「そこまで我慢しなくても……」)
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