講義
一般的に人の集中力が続く限界が90分だとか。
限界の時間いっぱい1コマの講義を充てる大学の授業って、実は後半は教授含めて誰も集中していないんじゃないかと今更ながら思う。
「ねぇタケ。」
大学の講義中、隣りに座った夢乃が尊にヒソヒソと声を掛ける。
「ん?」
「手が冷たい。」
「ユメは冷え症だもんな。」
「こんな時に限ってカイロ忘れたし。」
「講義終わってから売店で買うしかないな。」
夢乃は足の間に手を入れたり両手を擦り合わせたりして手を温めようとしていたが、やがて左手を伸ばして尊の右手を掴み、そのまま尊の上着のポケットに突っ込んだ。
「なっ!?」
ポケットの中で夢乃の細い指が尊の手をマッサージするように動く。
尊は夢乃の柔らかい指の感触に心臓の高鳴りを抑えられなくなっていた。
「やっぱタケの手は温かいねぇ。」
「お、おぃ、何やってんだよ……」
「何って、タケの手で暖を取ってる。ダメ?」
反則の上目遣いで尊を見る夢乃。
「だ、ダメではないけど……その……ノートが取れない……から……」
「あ~、じゃあ今日の分は私が取っておくよ。」
夢乃は何事も無いような顔でノートにペンを走らせた。
(「気持ち良くて楽だけど心臓が持たん……」)
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