昼寝

 春の陽射し麗らかな昼下がり。

 ちょっと体を横にしてそのまま寝落ちする気持ち良さは至高。


「ん……」


 右側に体を向けてウトウトしていた尊が軽い圧迫感を感じて薄く目を開く。


「すぅ……すぅ……」


 規則的な呼吸音と小さく上下(?)する目の前の渓谷。

 尊の頭の上には夢乃の右腕、脚には夢乃の右脚が乗っていた。


「おぃ……ユメ……」


「ん……」


 尊の声には反応するが、夢乃は目を閉じたまま寝息を吐き続けている。


「また勝手に部屋に入って来て寝てんのかよ……おぃユメ……起きろよ……」


「んん……」


 喉の奥だけで返事をする夢乃は、尊の頭に置いた腕を自分の方へ引き寄せる。

 尊の顔が夢乃の胸に押し付けられ、顔全体が柔らかい膨らみに包まれる。


(「むごっ!?やややヤバすぎる!耐えろ理性っ!」)


 目覚めから覚醒までの時間が短すぎて尊の脳内の処理が追い付かなくなっていた。


(「俺は悪く無い……俺は悪く無い……俺は悪く無い……」)


 尊はぎゅっと目を閉じて念仏のように唱えはしたが、そこから顔を離そうという努力は出来なかった……と言うよりしたくなかった。

 寝ている夢乃が頭を抱えている程度の力、なんて事は無いのに。




(「このまま……もう暫くこのまま……」)

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