保持

 犬や猫は四足歩行なので後足だけが偏って疲れる事は無い。

 人は二本の足の疲労を軽減させたい時、座ったり何かにもたれたりする。


「あ、あのさ……ユメ……」


「なぁに?」


「その……テーブルの上に……な……」


「テーブルの上がどうかした?」


「あ、あんまり……人に見せない方がいいって言うか……」


「んん?」


 尊の部屋に置かれたローテーブルに向かい合って座って本を読む尊とスマホを眺める夢乃。

 尊の視線はテーブルの上のを行ったり来たりしている。

 『あるモノ』……それは、テーブルの上の乗せられた夢乃の豊満な膨らみ二つ。


「あ~……これ?」


「ぶふぉっ!?」


 夢乃は自分の胸を両側から押さえて中央に寄せる。

 大きく開いたシャツの首元から覗かせていた谷間が更に深い渓谷を形作る。


「結構重たいからこうして乗せてると楽なんだよねぇ。」


「そ、そうなんだ……」


「肩も凝るし姿勢は悪くなるし……でも……」


「で、でも……?」


 夢乃がテーブルの上に身を乗り出して尊に顔を近付ける。


「タケが見たそうにしてるから乗せてるってのが一番かな。」


「ぶほっ!げほっ!ごほっ!げほっ!」


「こんなのただの脂肪の塊なのに。」




(「俺にはロマンの塊です……」)

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