夕食

 一日の疲れを美味しい夕食で癒す人も居るが、夕食をがっつり摂るのはあまり体には良く無いそうだ。


「ご馳走様でした。」


「お粗末でした。」


「いやいや、タケの料理は最高に美味しいよ。」


「そう言ってくれるのは有難いが、何でユメは毎晩うちで飯食ってんだ?」


 夢乃がお茶を一口飲んで湯呑みをテーブルの上に置く。


「毎晩帰りの遅いおばさんに『尊の事お願いね』って言われてるし。」


「だったら普通はユメが飯作るんじゃないの?」


「やだよめんどくさい。」


「言うと思った。まぁ料理は好きだから構わないけど。」


 尊は文句を言ったわけでなく、自宅に帰ればちゃんと用意されているのに何故わざわざうちで食べるのかが知りたかっただけだ。


「でもユメの作った飯を食ってみたいとは思うぞ。」


「気が向いたらね。」


 夢乃の旦那になるには料理が出来ないといけない……自分ならそこはクリアしてるな……と尊は秘かに思ったところで夢乃がいつもと変わらない口調で言った。


「尊が旦那さんなら料理作らなくていいから楽なのになー。」


「ごっふ!?」


「どうしたの?」


「な、何でもない……」


 夢乃に心の内を見透かされたと思って尊は咽た。




(「深い意味は無い……よな?」)

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