転倒

 掃除をした後のカーペットの気持ち良さは、日中干した布団に入るのとはまた違った良さがある。

 尊は珍しく床に寝転がって本を読んでいた。


「おぉっ!?」


「え?」


 夢乃がいつもと同じように尊の部屋に入って来た時、伸ばしていた尊の足に躓いて倒れ込んでしまった。

 倒れ込んだ先は尊の上。

 体幹の良さか、辛うじて覆い被さる瞬間に両腕を尊の体の左右に広げて自分の体を支えたが、やはりそこは勢いに勝ち切れず尊の上にぽすっと圧し掛かってしまった。


「ごめん……」


「大丈夫か?」


「何とか。タケは?」


「全然平気。つかヘンな所に寝そべっててすまん。」


「タケの部屋なんだから別にいいじゃん。」


 そんな事より、尊は胸の上に押し付けられる柔らかい膨らみの感触に理性を保つので精一杯。


「大丈夫ならどいて欲しいn……って何?」


 夢乃は上半身を軽く浮かして尊の顔をじっと見ていた。


「別に。タケの驚いた顔が可愛いなぁと思って。」


「んぐっ……!?」


 『可愛い』なんて言われて尊はつい動揺の声を上げてしまう。


「ホントいい男だよねぇ~。」


「い、いいからそろそろどかないか?」


「いいじゃん。折角なんだからもう少し観察するよ。」




(「理性が持たないのでご容赦を……」)

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