伸長

 何か趣味があれば休日はそれに没頭する時間に充てる事が出来る。

 尊は昔から興味のあった料理をする事が多い。

 今日は何を作ろうか、と頭の中にあるレシピを引っ張り出す。


「タケぇ……」


 何だか弱々しい夢乃の声が背後から聞こえて来た。

 振り向いた尊の目に入って来たのは、悲しそうな顔をして絶妙に胸の強調されたようなTシャツを着た夢乃だった。


「ど、どした?」


「この前ネットで見てかっこ良かったからTシャツ買ったんだけどさ。」


 夢乃がスマホの画面を尊の方に見せる。


「画像だとこの文字がめっちゃかっこいいと思わん?」


「かっこいいな。」


「なのにさ。私が着たら何か文字が横にびよーんて広がってかっこ悪い……」


 確かに画像のスリムなモデルが着たTシャツの文字は勢いが感じられるデザインだが、夢乃が着るとその文字が左右に引っ張られて間延びしたポップ文字のようになっている。


「あ~……うん……まぁ……仕方ないんじゃない……かな……」


「タケまでそんな事言う?この画像は絶対詐欺だよ。JA○Oに言い付けてやらないと。」


「や、止めといた方がいいと思うぞ。」


 ふくれっ面でスマホの画面を覗き込む夢乃だった。




(「は、反則だろ……あれ……」)

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