名前

 いつもと変わらない尊の部屋。

 尊が床に座ってベッドにもたれて本を読んでいる。

 夢乃はベッドに寝転がってスマホを眺めている。


「あのさ……」


「どした?」


「タケは何で私の事『ユメ』って呼ぶの?」


「ユメがそう呼べって言ったからだけど覚えてないのか?」


「そんな事言ったっけ?」


「俺はちゃんと覚えてるぞ。」


「いつ?どこで言った?」


「あー……小学1年くらいの頃……どこで言ったかは覚えてない。」


「ちゃんとじゃないじゃん。」


「完全に忘れてる奴に言われたくはない。」


「じゃあ私がタケの事『タケ』って呼ぶのもタケがそう呼べって言ったの?」


「いや、ユメは最初から『タケ』って呼んでた。」


「何で?」


「知らんよ。」


「まぁ『タケル』よりも『タケ』の方が呼びやすいのはあるよね。」


「あんまり変わらんだろ。」


「でもさぁ……」


「ん?」


「私の事を『ユメ』って呼んでるのタケしか居ないんだよね。」


「友達は?」


「『ユメノ』かな。先輩後輩は苗字だし。」


「そういや俺も『タケ』って呼ばれるのユメだけだな。」


「ふふっ。二人だけの呼び方って何かいいね。」


 尊は本を読み、夢乃はスマホから目を離さないままの会話だった。




(「うん……いい……」)

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