背丈

 尊は自分の部屋のクローゼットの扉の前で立っている。

 目の前には尊の顔をじっと見つめる夢乃。


「ユ、ユメ?」


「ん~?」


「何してんのかな?」


「背比べ。」


(「背比べって向かい合ってするものか?」)


 比べるまでもなく尊の方が夢乃より背は高い。


「タケって何cm?」


「177くらい……かな?」


「ふぅん……」


(「ふほっ!?い、息が……」)


「私が162だからちょうど15cmタケが高いのかぁ。」


 普通に正対してお互いの顔を見れば、尊は見下ろす形になるし、夢乃は見上げる形になる。

 尊の視線を真正面から受け止める夢乃は、やや真面目顔で尊を見詰めている。


「あんまり見詰められると何か照れるんだけど……」


「ふふ……タケの顔ってイケメンだよねぇ。」


「いきなり何言い出すかな。小さい頃からずっと見てるから慣れてるだけだろ?」


「そうでもないよー。友達とか結構タケに興味持ってる子居るし。」


「ふぅん。」


「そういうの、タケは興味無い?」


「興味無くは無いけど、ユメがよく言う『外見だけ興味持たれてもなぁ』ってやつだろ。」


 夢乃はにっこりと笑って尊の顔を見ていた。




(「ユメだけに興味持ってもらえりゃいいんだが……」)


 尊は狼狽え顔で夢乃を見ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る