看病

 体が侵入者を排除する為に起こる『発熱』は一般的には病気だが、血の巡りが良くなって体温が一時的に上がるのは健康な証拠だ。

 つまり尊の顔が熱くなったのは健康の証であって病気ではない。


「38度2分。」


 体温計を見るまで尊はそう信じていた。


「え……」


「いくら春だからって何も掛けずに昼寝したら風邪も引くよね。」


「面目無い……」


 尊が布団の中に潜り込むと一気に倦怠感に襲われる。

 夢乃は尊の額に冷却シートを貼り付けてから『ふふっ』と笑った。


「んぇ?何が可笑しいんだ?」


「弱ってるタケ見るの久し振りだな~と思ってさ。」


「あ~幼稚園の時以来かなぁ。」


「あの時も確かタケがお腹出して昼寝してた後だった気がする。」


 尊の脳内に当時の記憶が浮かんでくる。

 あの時も今のように、夢乃が額に冷却シートを貼ってくれて横に着いていてくれた記憶。

 同時に、その後の事も。


「あ……」


「どうしたの?」


「俺は大丈夫だからユメはもう帰れ。」


 夢乃も同じ事を思い出したのか、また『ふふっ』と笑った。


「そうだね。あの後と同じになったらさすがに笑えないし。」


 尊が寝込んだ翌日、夢乃も寝込んだ記憶。

 夢乃は尊の頭をぽんぽんと叩いて部屋を出て行った。

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