読書

 春の陽射しが部屋に注ぎ込む昼下がり。

 尊は床に胡坐をかいて座り、微妙な高さに肘を上げた姿勢で本を読んでいた。

 膝の上に乗った、夢乃の頭を避ける為に。


「なぁ……」


「何?」


 横向きに尊の膝に頭を乗せた夢乃はスマホの画面に見入っている。


「何で俺の膝を枕にしてるんだ?」


「んー……そこに膝があるから……かな?」


「なんじゃそら。」


「それと……タケの膝って納まりいいんだよねー。」


 夢乃はごそごそと体勢を変えつつも、尊の膝を枕にしたままは変わらない。


「そんなに納まりいいのか?」


「うん。家の枕以上だね。」


「そらどうも。」


「おねだんいじょぉ~ニ○リ♪」


「違うぞ。」


 尊がベッドの上に手を伸ばして脱ぎ捨ててあったブルゾンを取って、夢乃の腰から下を覆うように掛けた。


「おぉ、ありがとう。気が利くじゃな~い。」


「じっとしてるとまだまだ寒いんだよなぁ。」


 まだ多少寒さが残る季節なのに、ミニスカートで寝そべる夢乃の白い脚が妙に艶めかし過ぎるから……というのは言えない尊だった。




(「惜しい事ではあるが理性を保つ為だ……我慢するんだ俺……」)


 まったりと過ごすいい雰囲気の時間と引き換えに尊に与えられたのは強烈な足の痺れだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る