第15話 ママとパパ

「本当にすみませんでした」

深々と頭を下げて、眼の前にいる彼女に謝る。

「全然大丈夫ですよ!顔上げて下さい。別に痛いとか、嫌な感じがしたわけじゃないですから。むしろ、、、何でもないです」


何でちょっと嬉しそうなんだ。優しさが限界突破している。完全に俺のミスなのに。


結局何をしようとしていたのか、忘れかけていた。魔法を使うんだった。でも、さっきあんな事を起こしておいてだと言い出しずら、、

「よし、じゃあ今度こそやってみましょう」

あ、全然普通に行くんだ。

「次は気を付けてくださいね」努めて悪気の無い口調で彼女は言う。

「はい。気を付けます」

ふふっと笑いながら彼女は右手を差し出す。


感覚から見て、さっきの五十分の一ぐらいが調度良いだろうか。だとするとさっきのが如何に酷かったかが浮き彫りだな。次はしっかり様子を見てしよう。


「準備できました」

「了解。最初はゆっくりいくね」


「わぁ、すごい。体が軽いというか、わくわくします」

「よし、このまま発動出来そう?」

「やってみます!」


「άγγελος」

魔法陣が光を放つ。起動には成功したようだ。でも、ここからが大変だ。今この魔法は天界にリクエストをしている状態で、向こうから承認又は拒否されるまで複雑な構造の陣に強い魔力を行き渡らせなければならない。


カルミアが俺の手を強く握る。それに応えて俺も魔力を強める。

「がんばれ。もう一息」


三十秒ほど続いているだろうか。段々と彼女の力が弱まっていく。普通に生きていればこんな長時間魔法を使うことは無いから相当きついはずだ。頑張れ。もう少しのはず。


「うっ…!」

一際大きな光が輝いた後、ゆっくりとその光が収まっていく。


「大丈夫?!」

息を荒げながら頷くカルミアを抱えながら魔法陣の方に目を向ける。


人影らしきものが見える。上手く行ったのか?

「…?!子供、?」

はっきりとして見えてきたのは十歳程の男の子に見える。大人しそうな優しい少年といった見た目。しかしながら、頭上にはあの"輪"があり、背中には小さな翼も有る。勝手な偏見では天使って神々しい雰囲気を纏ったお姉さんみたいな人だと思っていたんだが。どうやら本当に偏見だったらしい。


「はじめまして。あなたたちがぼくのママとパパ?」

「え?」

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