第8話 はなし

王城のとある一室、本来はカルミアの自室。いまでは家具が片付けられ、限りなく質素な景観になっている。三年間も部屋をそのままに保てるはずもなく、もう大方片付けてしまったと国王は言っていた。そのため、この眠れる少女が知るであろう部屋とは言えなくなっているだろう。


彼女を取り戻して丸一日程経っていた。国王はカルミアを取り戻した喜びと、なかなか彼女が目覚めない事への不安でどうにかなりそうになっていた。それでも彼は国王だ。仕事は引くほどある。それで俺が代わりに彼女をているというわけだ。


彼女が起きたらどうしようか、まずこの三年間にあったことをざっと説明して、それから国王ととことん話してもらおう。国王には今、癒しが最優先な気がする。


そのあとは、、、俺は、山にでも籠って修行しよう。彼女には俺の被った代償について知って欲しくない。俺のために文字通り命を懸けてくれたのに、罪悪感なんて背負わせたくない。


国王に頼んで、山奥の土地を貸してもらって魔法、スキルの再習得と体の鍛えなおしをしよう。魔法のほうは大体一週間、ぶっ続けでやれば元通りになる。体を鍛えるのは、、、まあゆっくりやって行けばいいか。今の俺には使なんて大層なもの持ってないしな。


あぁ、あとあれもやってみたいな、、服屋の店主が言ってた、、、


「、、、ここは、?あれ?私なんで、、」

ベッドの上で眠っていた少女がゆっくりと起き上がりながら思わず言葉をこぼす。


目を覚ました。よかった。

「あなたは、、?」

とても混乱している様子だ。それもそうだろう。彼女からしてみれば、勇者を召喚するために生贄になって死んだかと思えば、知らない部屋で知らない男と二人きり。といった訳の分からない状況。取り敢えず説明しないとな。


「おはよう。良かった、生きてて。起き抜けに悪いんだけど、カルミアさんが疑問に思ってることについて、色々と説明させてほしい」

こうして、彼女に一通り説明を済ませた。


「と、まあこんな感じかな。」

「あと、ありがとう」

国の皆のために命を懸けてくれて。


俺のためで無くとも、皆の気持ちを代弁できた。


「いいえ、感謝するのは私の方です。私はあの時生贄になって死ぬ、そういう運命だと思ってました。でも、あなたはその運命を変えた。」

そう言ってカルミアは笑顔を見せた。


「じゃあ、これでおあいこってことで」

俺は貸しを作るのは好きじゃないし、上に立つ素質のある様な人間でもない。彼女とも対等で居たいから、これで丸く収めたい。


「他に聞きたい事はある?」

「あの、あなたについて聞いても良いですか?」

「そうだった!自己紹介するの忘れてた。俺は朝霧優斗。年は、、16歳」

「同い年だったんですね」

「うん。だから敬語はいいよ。それと、国王にも会ってほしい。三年間も君のことを想って、会えないことを悲しんで居たから。いっぱい話をしてあげて」

「そうします。」

彼女は目に涙を浮かべながら答えた。


二人だけにして、じっくり話させたほうが良いな。国王を呼んでくるか。二人が話してる間は、国王の仕事を出来る範囲で手伝っておこう。時間も潰せるし、国王の負担も減らせるだろうから。


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