第9話 久方振りの修行

かれこれ三時間程経っただろうか。二人とも目を赤くして王室へ帰って来た。積もる話が出来たのだろう。二人共穏やかで満足気な顔をしている。


大体やりたいこともやり終えたことだし、そろそろここを出て修行しようか。


優斗さんユウト、本当にありがとう」

「上手く行って良かったです」

本当に。この二人の優しい笑顔が見られて良かった。


「俺自身のやりたいことはやり切ったのでそろそろ此処を出ようと思います。」

「!?、、ここで暮らすんじゃないのか?」


国王には話しておこう。

「国王、ちょっと二人で話せませんか?」


カルミアには待って居てもらい、二人で一室に移動した。


「俺は彼女に代償について何も話していないんです。だから、一旦離れて気付かれないうちに失ったものを取り戻しておきたいんです。」


「そうだったのか、君は本当に良く考えているな。でも、偶にはあの子と会ってやってくれないか?」


一息置いて俯いた国王が呟く。

「あの子、カルミアの両親はあの子が幼くして事故で亡くなっているんだよ。祖父である私が育てて来たが、国王の私は親としてあまり面倒を見てやれなかった。きっとあの子は寂しさを感じているはずなんだ。」


他人の血縁関係に首を突っ込むのは野暮だろうと聞かずにいたが、彼女の両親らしき人物が居ないのはそういうことだったのか。


彼女は今まで苦しかっただろうな。親を亡くし、生贄になって死に。

彼女が起きて話した限り、ただ何気ない日常を謳歌し楽しく学生生活を送る少女と何ら変わりのないか弱い女の子だった。


傍から見たらただのお節介で、余計なお世話だろうが、俺は力を持って世界をリスタートしたんだ。周りにいる人たちには笑っていてほしい。


俺が力になれるかは分からないが、修行が終わったら戻って来る事も考えておこう。



「一週間程度あれば代償で失ったスキルだったりは元通りになると思うので、そのあとまた考えておきます」


国王は一瞬驚いたように間を見開き、そのあとすぐ見せた安心したような笑顔のままこう言う。

「そうか。私たちはいつでも待っているよ」



それから俺は国王から借りた山奥の一軒家で大量の本と睨み合った。朝起きて魔導書を読みながら朝御飯を作り、記されたスキルや魔法を習得しながら食べ、筋トレしながら、風呂の中でも魔法を駆本を読んだ読んだ。おかげで俺の今まで習得してきた数にして270ほどの魔法を再習得できた。おそらく忘れている物もあるだろうが、それはまた思い出したときにで良いだろう。


そうして一息ついて今。


暇だ。よくよく考えてみれば今までずっと何かと動いていた。生憎俺はこの世界での暇の潰し方をよく知らない。パソコンやゲーム機なんてものは無いし。


こうしてそわそわしてしまうのも、やはりカルミアの事を考えているからだろう。何かすることがあれば集中するのだが、暇だとどうしても気になってしまう。本当に一週間程しか経っていないが、このままここに居る訳にもいかない。一度会いに行こう。

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