第4話 勇者様

さて、これからどうしよう。


俺が目覚めたのは俺が以前転生した国。一番大きな街である"王都"の外れの草むらに眠っていた。


王都に向かって歩いているが、行くあてはないままだ。


まずは新しい服を買おうか。今の重苦しい装備だと嫌でも三年前を思い出してしまう。

幸いお金はアイテムボックスの中にそこそこ入っていた。


王都は俺が知る以上に栄えていた。西洋風せいようふうの石造りの建物が立ち並び、人々は活き活きした様子で過ごしている。街の中央にある広場にやってきた。


「大っきいなぁ、、誰だろう」

銅像だろうか、たくましい男性が剣をかかげている。

その隣には女性の像。こっちは祈っているように見える。俺がいた頃には無かったから、この三年間で大きな活躍をした人だろうか。


確かここだったはず。

広場から続く道の脇にある服屋。実際に来るのは初めてだが、王室の人達がお勧めしていた店だ。


「いらっしゃい!おや、初めましてかな」

店長だろうか、優しそうなおじさんだ


「初めまして。優斗です。」

「ユウトか!良い名前だな!年は18位か、その年でその名前は珍しいな。どんな服が欲しいんだい?」

「動きやすい服が有るといいんですが」

「そういやユウト、あんた職業は?」

「ゆうs……それがまだ決まってなくて、王都にも来たばかりなんです」

「そうだったか、でも今の重装備を見ると戦いに自信が有りそうだ」

「まぁ、一応は出来ます」

「それなら冒険者はどうだ?冒険者用の服なら動きやすいし、今日出来上がった最高傑作があるぞ!」

「冒険者、ですか、、、いいですね、お願いします。」

「おう!毎度あり!これがその装備だ。勇者様をイメージした最高の品だよ」

「勇者様?」

「まさかあんた知らないのか?広場の銅像を見ただろ?あれが勇者様だ。あんたと同じユウトって名前なんだよ」


え?あのとてつもなくイケメンでいかにも勇敢そうな人が俺?ちょっと誇張されすぎなんじゃ、、、


だとするとあの隣に立っていた女性の像は?


「そうだったんですね、あの隣の女性は誰ですか?」

「あぁ、あの子はカルミアと言ってね、勇者様を召喚する時に生贄いけにえとなった王女様なんだ。彼女への感謝の意を込めて、勇者様の隣に建てたんだと」


店主さん、何を言ってるんだ?生贄?そんな話聞いたことが無い。


今考えてみると確かに召喚魔法は超高難度で、代償なしに使えるものでは無いかもしれない。でもそんなの知らなかった。


あの召喚で俺の命は救われた。その代わりに王女様が死んだ。


何だその胸糞むなくそ悪い話は。自分のせいじゃないと思いたくても、罪悪感が頭を埋める。


「ユウト、大丈夫か?顔色がよくないぞ。王都に来たばかりで疲れたんだろう、この服もって、 宿で休むといい。」

「……はい。ありがとうございました。」


店主に言われた通り、今日はもう宿で休むことにした。








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