手作りの愛を込めて

「じゃあ作っていこうか」


ヴァレンタインはそう言うと型とクッキングシートを取り出した。


「今回はチョコブラウニーなんてどうだろうか」


「ブラウニー、難しそうなイメージがあるけど、普通にチョコ溶かして固めるだけとかじゃダメなの?」


「君は愛情というものの込め方を知らないのかい?手の込んだものの方が愛が伝わるだろ?」


「それもそっか、それでこの後どうすればいいの?」


「そうだね、じゃあチョコとバターをボウルに入れて50秒レンジでチンしちゃって」


「わかった」


私はチョコとバターの入ったボウルをレンジに入れる。

50秒は短いようですごく長い…


「そういえば、君はその人のことをいつから好きなんだい?」


「そうだね、いつから好きかとかはよく覚えていないんだけど、多分初めて会った時から気になってたんだと思う。何も持っていない私と違って全てを持っているあの人のことが」


「そっかそっか、でも気持ちを伝える気になってくれて良かったよ」


「ほとんど強制だったじゃんか…」


チーン


どうやらレンジでの温めが終わったらしい。


「じゃあそのままかき混ぜちゃおうか」


タイヤカキマゼールとばかりにチョコとバターをかき混ぜる。


「混ざりきったらオーブンで予熱しよう」


こうしてまたこの調理室に沈黙の時間が発生する


「じゃあ逆に質問いいかな?」


「なんだい?」


爽やかな笑顔で答えるヴァレンタインはガラスのように美しかった。


「あなたはどうして私にこんなことさせてるの?」


「そうだね、バレンタインに迷える子羊を助けるのがバレンタインの精霊の役目だからね」


「ふーん、そうなんだ」


聞いておいて特に興味がなかった。

なんで聞いたんだ私


「そろそろいい頃合いかな、じゃあここにホットケーキミックスと砂糖を振るおう」


「ふむふむ」


「さらに卵と牛乳を入れて混ぜる」


「これ、結構大変だね。混ぜるの」


「混ざってきたら更にココアパウダーを振るって入れて混ぜる。」


「これくらいでいい?」


「最後に愛を込めて混ぜるんだ。」


「なッ///急に恥ずかしいこと言わないでよ」


「大事な過程さ、愛を渡す行為だからね。」


「わかったよ。込めればいいんでしょ」


「じゃあ愛を込められたら最初に用意した型に流し込んで高い位置から2、3回落とすんだ。」


「これも大変じゃん」


「うまいうまい。180℃のオーブンに30分〜40分入れたら完成だ。」


「やっとできた。こんなに大変なんだね手作りって」


「それがいいんだよ。こうやって頑張って1から作ることで思いが伝わるものだよ」


「そんな気がしてきた。むしろ喜んでくれなかったら泣いてもいいレベル」


「その意気だよ。そういう幸せを皆に届けたいのさ」


「じゃあそういう人たくさん助けてあげてね」


そしてしばらくして綺麗にブラウニーが完成した。




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