論理的な殺意

 ドノミエ・スタ暦七二四九年に、メダレイグ星系の第四惑星ウアネッタが兵器化された模倣的中性子星的炸裂線の直撃を受けて破局的終焉を迎えたことは、七十七銀河連団にとって最悪の未来を想像させた。

 バラバラに砕け散ったウアネッタの外殻は星系外へ、そして果てしない宇宙へ吹き飛び、地上に栄えていた彼らの文明は灰燼に帰した。七十七銀河連団ノカムスキブ221連合軍の総司令シメジ・レフはその報せを受けて途方に暮れていた。故郷の星が消え去るというのは、数多の星の海を渡る者にとって、足をつける陸地が見当たらなくなるのと同じだ。故郷の重力を感じ、メダレイグの光を受け、そうして初めて自らの自己同一性を認識できるのだ。

「どうやら、先のノヤウザント恒星圏への攻撃に対する報復らしい」

 薄暗い戦略室の中で、アマブスカ・ホバーが溜息交じりに報告を読み上げる。恒星圏では、恒星が発する莫大な能源を受領・蓄積・運用している。七十七銀河連団としては、彼らが順調に能源を蓄積することは看過できないものだったのだ。

 宇宙の総能源量決定論が伝播して久しいが、そうなれば各陣営が能源確保に躍起になるのは必然だ。今や予言によって、宇宙崩壊は目前に迫っていることが分かっている。宇宙に広く分布する人間たちは確保した能源から新たな気泡宇宙の創出に乗り出している。

「この暴虐的な行為を断じて許すことはできん……!」

 涙を浮かべて力説するシメジの目には、怒りの炎が灯っていた。アマブスカはその怒りを自由に燃え盛らせるわけにはいかなかった。

「しかし、報復は次の報復を生み出すだけだ」

「お前の故郷が破壊されても同じことが言えるのか?」

「そういうことじゃない。戦いが起これば、我々の保有能源も目減りする。計画に照らし合わせれば、我々はすでに保有能源の想定量をタイヂュフ基準で四・二も下回ってる。気泡宇宙の創出とその後の整備にかかる時間を鑑みたら、いかにギリギリの状態か分かるはずだ」

「模倣的中性子星的炸裂線には莫大な能源を必要とする……。奴らは新しい宇宙の創出より、現行宇宙を支配下に置くことを主眼に置いているんだ。そんな連中に及び腰では、新たなる宇宙への扉も開くことはできないぞ」

 シメジの攻撃意思は固いようだった。アマブスカは結論を一旦保留して、戦略室を出ることにした。

 このままでは、恒星間戦争の火蓋が切って落とされるのも時間の問題だ。そうなれば、今以上に戦略判断は紛糾するに違いない。七十七銀河連団内でも、気泡宇宙の創出を優先する派閥と現行宇宙における支配を優先する派閥とで論が二分されている。

 アマブスカは見たのだ。最初に創られた実証的な気泡宇宙が現行宇宙の中で自壊していく様を。おそらくは、自重を支えきれなくなり、現行宇宙との境界が崩壊したのだ。気泡宇宙は現行宇宙から切り離されて初めてひとつの宇宙として成立する。そのための方法論はまだ確立されていない。

 溜息と共に時空研究棟へ足を運ぶ。ここは、かつて彼が宇宙船活動士として理論を学んだ場所だ。このフィクラウシ級首都船・パチアナの中で、唯一といってもいい、彼の心が休まる場所だ。

「浮かない顔してるじゃないか。また総司令とやり合って来たのか?」

 悪戯っぽい笑みでアマブスカを出迎えるのは、ここの最高研究責任者イルフォルド・イカチだ。時空研究棟の一番奥の彼専用個室がアマブスカの愚痴の受け皿なのだ。

「今回ばかりは彼を止められる気がしない。なんせ、故郷をやられてるんだ」

 彼とてシメジの主張を理解できないわけではない。感情的になるのも当然だと思っている。しかし、七十七銀河連団として見た時に、簡単に容認できるものではない。

「最終的な連泡宇宙への編入を考えたら、報復行為に出るのはかなりマズい」

 イルフォルドは右頬のほくろを指先で掻いて呟いた。

「連泡宇宙、ねえ。理論だけが先行して、本当に泡みたいに膨らんでる。そいつに誰もが縋りつきたくなってる。気持ちは分かるが」

 二人の間に意味深な沈黙が流れる。

 実証的な気泡宇宙の自壊は、極秘裏に観測され、政治的な意図によって隠蔽された。公表しようとした者は殺された。もうすでに、気泡宇宙の実現如何は二の次なのだ。人間の尺度からすれば、現行宇宙の崩壊は遥か未来の出来事だ。この時代を全うすればそれでいいと考える者たちにとって、現行宇宙の崩壊は、所詮それに直面する世代に丸投げできるものに過ぎない。アマブスカは心底打ちのめされた様子だった。

「八方塞がりなのさ。どの立場を取ろうとも、破滅への道しかない」

 イルフォルドがニヤリとする。

「平行気泡宇宙の君も同じことで悩んでいるのかもしれないな」

「ついさっき理論だけみたいなこと言ったなかったか?」

「それは人工的気泡宇宙のことだよ。この宇宙が気泡構造をなしているらしいことは君だって理解してるだろ」

 アマブスカは遠い目をする。その目に浮かぶのは、宇宙終焉の姿だ。

「この宇宙の周縁部の次元境界面が気泡宇宙の膨張によって崩壊する……。誰もが知ってる宇宙モデルだ」

「そして、この気泡宇宙の周囲にも同じような気泡宇宙が存在する。そこには、君そっくりの……いや、君自身と言ってもいい人間も存在するはずだ」

「どの宇宙の僕も内省的な存在だと言いたいのか? 仕方ないだろ。もう取り返しのつかないことが起こってしまった以上、ありとあらゆる解決策を考えなければならない。難しい顔にもなるさ」

「君に面白い人間を紹介しよう」

 イルフォルドはそう言って微笑した。


 時空研究棟理論開発部で沈思黙考の体のまま全く動かない女がいる。それがイルフォルドが言っていたキマウ・カ・タコサだ。アマブスカが近づくと、顔を上げたその顔がパッと明るくなる。

「聞きましたよ、イルフォルドさんから。お悩み相談がしたいんですって?」

「どういう伝え方をしたんだ、あいつは……」

 アマブスカはキマウの胸元に「研修員」という札がついているのを見つけた。

「新人なのか?」

「新人の話は聞けねーって人ですか?」

 真顔で聞かれて、アマブスカは笑ってしまった。

「そんな堅物に見えるか?」

「言ってみただけです。ちょっとこれを見て下さい」

 キマウは部屋の隅に立てかけてあった板を引っ張り出してきた。それを机の上に置く。板にはびっしりと数式が書かれていた。それを図示したものが最後に描かれており、アマブスカはそれを見て声を漏らした。

「重力的特異点か」

 キマウは慌てて部屋の扉を閉めると、声を潜める。

「これは極秘の仮説です」

「どういうことだ?」

「私が研究しているのは、重力的特異点を利用した時間遡行論です。簡単に言えば、重力的特異点の周囲にある環状構造に流れる負の能源で過去に遡るというものです」

「そんなことが可能なのか?」

「理論上は!」

 アマブスカは重力的特異点の図を見下ろした。

「しかし、重力的特異点の影響下での活動は難しいだろう」

 キマウは得意げに人差し指を振った。

「そこから先が私の時間遡行論の肝なんですよ。私は専門が工学で、剛体防御膜を開発しました。簡単に言えば、強力な重力下でも物質の保護ができるようになったんです。どういうことかというと……」

「重力的特異点での活動が可能になる?」

「そういうことです。そして、先日、小型の通信機を乗せた船で実験を試みたんです。重力的特異点の負の能源を得た船からの信号の発信時間が次第に過去へ推移していくのを確認したんです」

「その技術を発展させれば、過去に人を送ることも可能になるというわけか」

 そうなれば、ウアネッタ崩壊を回避できるかもしれない……アマブスカは希望に目を輝かせた。しかし、現実はそう甘くないようだった。キマウが声を落とす。

「ただ、信号発信の時間推移を見ると、どうやら、数週間前で推移が停止するようなんです。つまり、遡れる時間に限界がある」

 決断の時は、待ってはくれない。アマブスカの瞼の裏に、宇宙を船で飛び回った頃のことが蘇る。

 アマブスカはすぐにシメジのもとに向かった。キマウが説明した技術について語るその表情は深刻だ。

「イルフォルドから報告を受けた。だが、三十三銀河連団による情報戦が苛烈を極める中では、容易に行動に移せないのが事実だ。これを奴らに奪われたが最後、我々に勝機はなくなる」

「では、どうすれば……! 我々には時間がもうない。時間遡行の限界も迫ってきている。ここで行動を起こさねば、我々は永遠に奴らの後塵を拝すことになる」

「これ以上の情報の拡散は避けねばならない。たとえ、我々の陣営内のことでも」

 諜報部隊の暗躍はかねてより懸念されていた。アマブスカは拳を握りしめた。

「では、私が船に乗ります」


 用意された小型の船は銀河間航行を可能にする空間跳躍機能が搭載されている。

「目的地の重力的特異点はメモントゴム星系にあります。以前の実証実験で使用しましたが、三二〇〇万年前にメモントゴムが崩壊して重力的特異点になりました。船の制御ですが、メモントゴム近傍で自動制御に切り替わります」

「重力圏から脱することができるのか?」

 飛行服に着替えたアマブスカは、真剣な眼差しだ。

「航行経路はメモントゴムの周囲の円軌道で、剛体化した錘を射出して、その遠心力で重力圏から脱します。その射出制御もすべて自動で行われますので、ご安心を」

「至れり尽くせりというわけか」

「目的時間は二週間前です」

「二週間前に到着したらどうする?」

「パチアナに帰還して下さい。向こうで必要な情報はこの船に搭載済みです」

 うなずくアマブスカにイルフォルドが歩み寄る。

「君の勇敢な行動が我々の未来に繋がる。誇らしいよ」

 アマブスカの乗った船は、パチアナの特殊作戦用の射出口から宇宙へ出発した。およそ六〇〇光年先のメモントゴムまで空間跳躍で一気に移動する。そこはすでにメモントゴムの重力圏だ。

『自動制御への切り替えまで、あと二時間』通信で届くキマウの落ち着いた声。『船体の剛体化をこちらで行います』

 とは言うものの、アマブスカに認識できるような変化は何もない。しばらくして、キマウの言葉通り、船が自動制御に切り替わった。

「初めての重力的特異点なんだ。何か心構えは?」

『別に、そこに座ったままでいいですよ』

 冷めた口振りだった。

「ものすごく揺れるとか、グルグル回るとか、そういうことがあるのか?」

『ないです。案外、普通です』

 アマブスカは一人で頬を緩めた。

『ここから先、重力で時間の流れが変わってきますんで、音声での通信はもうできなくなります』

「心細いじゃないか」

『我慢して下さい。二週間前で会いましょう』

 通信を終えて、アマブスカの船はメモントゴムの周縁部に到達する。ゴトリと音がして錘が射出される。周囲はすでに光が湾曲して暗闇が広がっていた。アマブスカには今、自分のいる場所がどこだか分からないが、時間を計測する機器が時を逆向きに表示し始める。時間の逆流が起こっているのだ。すでに船は一日前に到達している。今頃は、戦略室でシメジと顔を突き合わせているはずだ。

 アマブスカの脳裏に、ふと疑問がよぎる。

 ここにいる自分はなんなのか?

 戦略室に居なければならない自分が今、ここにいる。船の窓から後方を見る。凄まじい光の帯が無数の筋を引いて船の前方へ過ぎ去っていく。その方向がメモントゴムの中心だろう。

 警告音が鳴る。危機の状態を示す画面に、見覚えのない表示が現れていた。

≪模倣化異常検知≫

 見ると、錘と船とを繋ぐ剛体化されたはずの線が異常を示して、画面上で点滅している。アマブスカの脳裏に嫌な予感がした。遠心力で重力圏を脱出するのであれば、これは命綱と言える。必死で対処策を講じるが、警告表示は消えない。そもそも、模倣化というのは、三十三銀河連団の技術であったはずだ。それが、この船に搭載されている……。

 アマブスカは、画面を操作して機械制御構文を調べ始めた。途端に、彼の顔から玉のような汗が滲み出した。機械制御構文に三十三銀河連団で共通語とされている言語を見つけたのだ。それらは、錘やそれを船に繋ぐ線、そして、この船体自体の制御に深く関わる箇所に記述されていた。

 ──剛体化防御膜は模倣化技術か!

 アマブスカがそのことに気づいた時はもう遅かった。錘を繋ぐ線が切れたのだ。それは、彼の命の終わりを意味する。

 ウアネッタを崩壊させた模倣的中性子星的炸裂線……あれは模倣化技術を利用して、中性子星の光線炸裂という天文学的現象を再現させたものだ。アマブスカの瞼の裏にキマウの顔が浮かぶ。無邪気そうな顔をしたあの女は三十三銀河連団の諜報部員だったのだ。アマブスカの耳朶にシメジの声が蘇る。

「これ以上の情報の拡散は避けねばならない。たとえ、我々の陣営内のことでも」

 重力的特異点を利用した時間遡行論には、人間を使った実験結果は存在しない。キマウはアマブスカを使って実験結果を得て、それを母体へ報告するつもりなのだ。

 時間の表示が二週間前に近づく。

 アマブスカは悔やんでも悔やみきれない思いを抱えながら、遠のいていく意識の中で、かつて宇宙を飛び回った頃のことを思い返していた。


 次にアマブスカが目覚めた時、彼のまわりに血の玉が浮いていた。

 ハッと身を起こして、状況を確認する。時間表示は二週間前のまま。そして、周囲の宙域に重力源はなかった。どこか遠くの宙域に放り出されたようだ。どうやら何らかの衝撃が加わった煽りを受けて、アマブスカはどこかにぶつかって口の中を切っていた。生きているのか死んでいるのか判然としないまま、彼はパチアナへの通信を行った。

「こちらアマブスカ、パチアナ応答せよ」

 しばらくして、通信が入る。

『本当にアマブスカなのか?』

 イルフォルドの声だった。

「ああ、本当だ。何が起こったのか分からないが、どうやら成功したらしい」

『成功? 一体何が?』

「時間遡行だよ」

 イルフォルドはアマブスカの言葉を受け止めきれないようだった。説明は後回しになり、アマブスカの船がパチアナに帰還する。出迎えたイルフォルドにアマブスカは駆け寄った。

「キマウ・カ・タコサは三十三銀河連団の諜報員だ! 今すぐ捕まえてくれ!」

 イルフォルドの目が丸くなる。

「そんな馬鹿な……! 彼女は最近になって時空研究棟にやって来たばかりだぞ!」

「いいから早く!」

 アマブスカの必死の形相に、イルフォルドは従わざるを得なかった。すぐに通信機でキマウを確保するよう命令した。彼は通信を終えると、アマブスカに心配げな顔を向けた。

「君のことを心配していたんだぞ。急にイグルムに向かうと言って出て行ってしまっただろう?」

 アマブスカは二週間前のことを思い出す。故郷のイグルムで母親が倒れたと知らせが入って、急遽戻ったのだ。母は無事健康を取り戻した。

「すまない。急なことだったから、誰にも何も伝えずに出てしまったんだ」

「まあ、無事だったなら、それでいい」

「イルフォルド、二人で話したいことがある。重要なことだ」

 アマブスカの目にイルフォルドは二もなくうなずいて、二人は時空研究棟のイルフォルドの部屋に向かった。イルフォルドが扉を閉めるなり、アマブスカは興奮気味に口を開いた。

「聞いてくれ。俺は二週間後の未来からやって来た」

「一体どうしたんだ。急に何を言ってる?」

「いいか、もうすぐ、三十三銀河連団がウアネッタを攻撃する。もう我々は後戻りできなくなる! 今ならまだ間に合う。ウアネッタ人を惑星移住させるんだ!」

「ウアネッタを……? そんな馬鹿な……。それに、あそこは、総司令の……」

「それを防ぐために、僕はやって来たんだ、メモントゴムの重力を利用して」

「あそこから戻って来たのか?」

 アマブスカは時間遡行について説明した。イルフォルドの顔がどんどん険しくなっていく。

「キマウは、僕を実験台にした。だが、不測の事態が起こったんだろう。僕はこうして帰還することができた。奴らの思う壺にはならないぞ」

 イルフォルドは左頬のほくろを指先で掻いて思案した。

「しかし、どうやって君は戻ることができたんだろう……?」

「僕もそのことをずっと考えていた。もしかすると、気泡宇宙論というのは我々の幻想なのかもしれない」

「どういうことだ?」

「重力的特異点だよ。重力的特異点は穴だという仮説があるだろう? 僕はその穴を通って別の宙域に放り出されたんだと思う。それなら、この宇宙には穴があることになり、気泡宇宙論は成立しなくなる。気泡に穴が開いたままでは、この宇宙が膨張するはずがないからだ」

 イルフォルドは驚愕の表情を浮かべる。重力的特異点はこの宇宙に無数に存在していることが分かっているのだ。そこへ、治安維持部からの通信が入る。

『キマウ・カ・タコサの姿が消えました』

 イルフォルドの声が飛ぶ。

「隅々まで探して下さい!」

『ですが、忽然と姿を消したのです……! 我々の目の前で』

「どういうことですか?」

『光の粒子になって、跡形もなく消えてしまった……』

 イルフォルドとアマブスカは顔を見合わせた。

「三十三銀河連団の新しい技術か?」

 イルフォルドはアマブスカの想像を振り払うように首を振って、通信機に声を返した。

「とにかく、調査を続行して下さい。人が急に消えるなどということはあり得ない」

 通信を終えたイルフォルドは机の上に手をついて溜息をついた。そして、残念そうにアマブスカを見つめた。

「さっきの話の続きだが……君は気泡宇宙論を君自身の身体を使って反証したということになる。反証してしまったのだ」

 その声には深く沈み込んだ響きがある。アマブスカが怪訝な顔を浮かべる中、イルフォルドは歩み寄って来て、静かに、そして素早くアマブスカの胸にナイフを突き立てた。イルフォルドが身を引いてナイフを抜くと、アマブスカの胸から大量の血が流れ出す。イルフォルドは、手にしていた白い刀身のナイフを見つめた。不思議な文様がその表面に刻まれている。今やその白い刃は血を吸うようにして赤く染まっていた。

 イルフォルドの足元に倒れ込むアマブスカは最期の声を振り絞った。

「な……、なんで……」

「気泡宇宙論を反証されるのは具合が悪いんだ。人工的気泡宇宙の存在意義がなくなってしまうからね。私は君をずっと試してきた。人工的気泡宇宙に対する君の立場をね。君はずっと気泡宇宙論に否定的な見方を示していた。それだけならまだ見逃せていた。だが、反証してしまったんだ」

 アマブスカの目から生気が失われていく。イルフォルドはそれを見下ろす。

「残念だよ、友よ」

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