第8話 俺の能力
能力に代償。
神路の能力もはっきりとは知らないし、その代償も今まで知らなかった。
「それで、光の役割というのは……」
今までの話の流れから、なんとなく察しがついていた。でも、それも知らない話だった。
「お察しの通りです。代償を無効化する。そういう力を持っているんです」
「無効化」
それは、愛されるのも当然だ。代償を気にしなくて済むなら、傍に置きたいと誰だって思う。納得できた。
代理なんていらない。なんの能力もないのだから。本物を渇望するはずだ。
「それじゃあ、皇帝は俺が偽者だと気がついているのではないですか?」
神路と同じく、神威嶽だって能力が高い。国のトップになるぐらいだ。つまり、神路と同じぐらいの代償を払っている。
でもそれを、俺は無効化出来ない。
週一で会っているから、俺に力が無いと気づいているだろう。
「……ええ。なんとなくは察しているでしょう。これまでは、ですが」
「どういうことですか?」
「先ほど、あなたは無効化したじゃないですか」
「俺が?」
全く身に覚えがない。俺は頭を叩いただけだ。無効化なんて、そんな大層なことはしていない。
「気のせいじゃないですか。俺は別に何もしていませんよ」
俺に力があれば、追い出されるはずがない。絶対に神路の思い違いだ。
「……でも、今までこんな早く元に戻れたことなんて無かったのに……」
神路も、まだ確信が無いらしい。
だから、はっきりとは言ってこない。
「……俺じゃ、ないですよ。俺は、俺は偽者なんですから……そうでしょう?」
自分で言っていて悲しくなる。使い物にならないと言っているみたいなものだ。でも事実だった。重くなりそうな空気を明るくさせようと、あえて軽く笑う。
「それを一番よく知っているのは、神路様じゃないですか」
図星をついたようで、神路は黙り込んでしまった。結局、重い空気になった。
逆に認めれば良かったのだろうか。俺には主人公と同じぐらいの力があると言えば、生存確率も上がったかもしれない。
でも、もしそれが勘違いだったら。思い上がって落とされるぐらいなら、初めから期待しない方がいい。
「……勘違いの可能性もあります。検証しましょう」
「それで、もし俺に無効化する能力があったらどうするつもりですか? 遅かれ早かれ、本物が現れますよ」
「それは……」
正確な時期を言うならば、俺が20歳になる2年後に。俺の能力を発見したところで、本物に叶うはずもない。
「俺は、今まで通り代理の光として義務を果たしていきます。だから検証しないでください。……ああ、でも。もし困っている時に助けになれそうだったら、その時は頼ってください。力になれるかは分かりませんが、俺に出来ることは精一杯しますので」
代償について初めて知ったが、それと付き合っていくのは大変だったはずだ。大きな力には、それだけの代償が伴う。
やれることがあるのに、見て見ぬふりは出来ない。
それに、関係性は良好な方がいい。
出ていく時も、すんなりといくはずだ。利用価値を示していれば、そうそう排除する気は起きないだろうし。色々と良いことづくしかもしれない。
「あなたは、それでいいのですか?」
「いいに決まっているじゃないですか。本物が現れた時、俺がいつまでも居残っていたら気まずいでしょう。前にも言いましたが、素直に出ていくつもりですから安心してください。だから、出ていった後生活するための資金を貯められれば、それでいいんです」
言質でもとりたいのか、しつこいぐらいに確認をとってきたから、はっきりとまた宣言しておく。そうすれば、ようやく納得してくれて小さく頷いた。
「分かりました。検証するのは止めておきます。私を叩いたのも緊急事態だったということで、不問にしておきます。そうですね。金貨は代金と迷惑料として、とりあえず受け取っておいてください」
「え、でも」
「これから商売をするための、お祝いとでも思ってください。資金はあればあるほどいいでしょう」
「それなら……お気遣いいただきありがとうございます」
断っても押し切られる気配を感じ、それならと遠慮なくもらうことにした。神路が言う通り、あればあるほどいい。
どこにしまっておこう。分かりやすい場所だと、世話係がくすねるかもしれない。前に一人処分されたとはいえ、まだまだなめられている。
テーブルに置かれた金貨をどうするか考えていると、神路がゴソゴソと動く気配があった。油断しているところを襲撃しようとしているのか。完全に意識をそらしていた俺は、すぐにそちらを見た。
「……どうでしょうか?」
「あ、えっと。よく似合っています」
驚いた。胸の辺りで輝いているのは、俺の作ったブローチだ。こんなに早くつけてくれるなんて。
感想を求められたから、とりあえず褒めておく。そうすれば、どこか嬉しそうになった。俺が褒めても嬉しいのか。
「こちらは、大切にしますね。素晴らしいものを、ありがとうございます」
「あ、はい。どういたしまして?」
なんの含みもなく感謝の言葉をかけられ、俺が困惑している間に、神路は恭しく頭を下げて部屋から出ていった。
残された俺は、ピンチを乗り切れたと素直に喜べずに、しばらくその場で固まっていた。
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