田島のゆうれい
「だから...幽霊がやったんだって!」
「はいはい、もう聞き飽きたわそれ」
翌日、田島の周りには小さな囲いができていた。
「まさか、『幽霊がやったんだ!』って言い訳するとは」
「違う、言い訳なんかじゃなくって..」
「あーはいはい、幽霊がやったんだね」
「先生も呆れてたもんね」
「だから違うって!」
「何が?」
「ほんとに幽霊がやったの!」
「まだいってるわ、こいつ」
田島を覆う壁が一体になって揺れた。
「はい、ではHRを始めます。今日の欠席は...」
朝のHR中に昨日のことを思い出す。
田島のあの発言の直後、クラスは爆笑の渦に巻き込まれたいた。
「お前、マジか田島」
「幼稚園児でも言わねーぞそれ」
散々言われた田島は顔を真っ赤にして
「本当だって」
と叫ぶようにその一声一声に答えていった。
先生も開いた口が塞がらずに苦笑いして
「そうね、幽霊ね。」
と繰り返すだけで精一杯だったらしい。このHR後に田島は職員室に連行された行った。
そして一夜明けて今日、田島をいじる輩が跡を立たなかった。
「ゆうれい、お前今日給食当番だろ」
「ゆうれい、もっと走れよ!」
「ゆうれい!」
昼休みを過ぎたあたりにはもう噂は学校中を駆け巡り、別のクラスの人からもゆうれいと呼ばれたいた。
それでも田島はめげずに講義を続けていた。もう、諦めて認めらばいいものを。その強情さは本当に幽霊がいたのか、と考えさせれらるほどだった。
掃除の時間、ゆうれいこと田島と同じ班なので気になって聞いてみた。
「幽霊ってどんなのだった?」
田島は初めて揶揄われずに聞いてくれたのが嬉しかったのか、みるみると表情を綻ばせ
「本で見たまんまだったよ!足はなくて浮いていて白くて...」
と洪水のようにドドドと喋り始めた。
からかい半分、興味半分だったのでここまで喜んで話してくれたことに申し訳なさを感じながら話を聞いた。別に本気で田島のことを信じているわけじゃない。けれど退屈な掃除の時間を埋めるには十分だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます