仲裁

 騒ぎに駆けつけ、エマ先生が寮から出てきた。

 玄関の扉を開けるなり、二人がもみ合っていたので、落ち着くように言い聞かせるが、争いは止まらない。


 そこで、「ここに来れなくなっちゃうよ?」とエマ先生が言ったところ、二人はピタリと動きを止めた。


 五分後。


 ボクの狭い部屋には、三人が上がり込んでいた。


「ふぁ、あぁぁ」


 眠くて、欠伸をしてしまう。


「今日のところは、解散して。自分の部屋で眠りましょう。ね?」

「むー」

「ふん」


 二人は不満そうだった。


「これ以上、騒いじゃったら、もっと人が集まっちゃうよ」


 さすがに、そうなったら二人だって嫌だろう。


「分かったわよ。今日のところは、これくらいにしといてあげる」

「……くそ」

「今、何て言ったの?」

「まあ、まあ!」


 また争いが始まりそうだったので、ボクは慌てて間に入った。


「では、私が二人を部屋まで送るので。ハルくんは、もう寝ちゃってください」

「はい。助かります」


 二人がいると、眠れない。

 エマ先生には、本当に感謝だった。


 こうして、二人を見送ったボクは、やっと床に就くことができた。


 でも、これで終わった感じがしないのは、杞憂きゆうだろうか。

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