吸いつくされる

変わったハル

 二人は劇的に変わった。

 ボクが校門前で身だしなみをチェックしている時。


「今のはよくない?」

「や、タトゥーはまずいでしょ」

「でも、……どうすんの? もう入れてるし。簡単に消せないでしょ。先生に怒られるどころじゃないよ」


 隣から長門さんが口出しをするのだ。


 確かに、タトゥーはまずい。

 けど、正直に告げる事が本人のためになるのか、となると、ボクは悩んだ。


 以前なら、「ダメです。先生にチクります」と言っていたが、今は不思議と相手の身を考えてしまう。


 その理由は、長門さん――人の話を聞くようになったからだろう。


「え、と。太ももの内側ですよね?」

「うん。ほら」


 スカートを捲って、太ももの内側を見せてくる。

 そこには炎っぽいタトゥーが入っていたが、小さいといえば小さい。


「スカートの裾を伸ばしてください。バレたら、庇えないです」

「ん、わかったぁ」


 言われた通りにギャルっぽい生徒が、スカートの裾を戻す。


「ハルくんさ。なんか、変わったね」

「そうですか?」

「うん。キー、キー言わなくなった」


 それだけ言うと、ギャルっぽい女子は校門を潜る。


「ねえ。ハルくん」

「え、なに?」


 ヒナ姉ちゃんが怖い顔で近寄ってくる。


「どうして、今の子を通したの」

「どうして、って」

「校則違反していたなら、先生に報告しないと」

「んー、でも、なぁ」


 言ってる事は分かる。

 ヒナ姉ちゃんは正しい。

 ただ、やはりボクは悩んでしまう。


「今回は、大目に見るって事で、どう?」

「……ハルくん」


 ヒナ姉ちゃんが怖い顔で睨んでくる。


「……う」

「落ち着きなよ。パイセン」

「というか、何で長門さんがここにいるの!」

「彼ピッピが心配で」


 恋人アピールが一段と激しかった。


「目くじら立てるだけじゃ、誰も言うこと聞かないでしょ」

「……」


 ヒナ姉ちゃんが、眉間に皺を寄せて俯いた。

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