告解部屋の犬

 告解部屋にて、ボクは仕切り越しに悩みを相談する。


「最近、クラスの女子が変なんです」

「スン、スン、わんっ」

「いや、前々から変なんですけど。最近は、特に。人が変わったようにすり寄ってくるし」

「くぅ~んっ」


 股の間に、スリスリと温かい何かが当たっていた。

 手を伸ばすと、そこにはさらさらとした髪がある。


 真っ暗なので、何をされているかは具体的に分からないものの、感触でだいたいは把握した。


「先生。なに、してるんですか?」

「……その、今日は一段と濃いにおいだったので、つい」


 告解部屋なのに、エマ先生は同じスペースにいた。

 エマ先生は、あれ以来、本当に犬になっていた。

 もちろん、他の先生がいない間だけだ。


「わあ。とっても、濃いです」


 ズボンを下ろされ、湿った息が敏感な場所に当たる。


「あの、……待った。やめ」


 その時だった。


「ばあっ!」


 仕切りの向こうから、声がした。


「長門さん? 何やってんの?」

「ハルくんの声がしたから、入ってみた」


 その間、エマ先生はずっと臭いを嗅いでいた。


「はぁ、……あ、はぁ。……もぉ、我慢でき、な……」

「ん? 誰かいるの?」

「え、いないいない!」

「はぁ、む」

「うっ、おおおおお!」

「な、何!?」


 敏感なところが温かいものに包まれた。

 中腰の状態で、膝が笑いながらも、ボクは何とか耐える。


「何でも、ない」


 エマ先生は、吹っ切れてしまった。

 あろうことか、ボクはエマ先生の顔を太ももで挟むようにして、仕切り板の穴に顔を突きだす。


「あのさ。アタシ考えたんだけど」

「な、なに?」

「アタシ達、もっと、ちゃんと付き合ってみない?」


 敏感な場所には、強すぎる刺激が与えられ、声が出せなかった。

 逃げないように尻に手を回され、どんどん敏感な部分が食べられていく。


「どう? 絶対に相性良いと思うんだ」

「え、あー、うん」

「……ほんと?」


 頷いたわけではない。

 言葉を呑み込んだのだ。


「う、んんっ」

「嬉しいっ! あは。なんだ、ハルくんもアタシのこと好きなんじゃん」


 違う。

 今は、それどころじゃない。

 穴に頭を突っ込み、ボクは声を押し殺した。


「んじゃ、交際初のチューね」

「つ、付き合ってたんじゃないの?」


 長門さんが勝手に言ってただけだが、なぜこのタイミングで告白してきたのか、気になった。


「だって、ハルくん拒否るじゃん。だから、ちゃんと言葉にして言ったんじゃんか」

「あ、そういう、ことね。うっ」


 股座にある頭を押さえつけ、動かないようにする。

 だが、ナメクジのような生き物が敏感な部分を這いずり回り、余計に音が小さいながらも響いてしまう。


「はい。んー」


 顔を持たれ、唇に柔らかい感触が当たった。

 今までのキスとは違い、労わるように唇を擦り合わせるようなキス。


「ん、ふぁ……っ」


 漏れた吐息が口内をさらに湿らせ、舌先が吸われていく。

 激しいキスとは違い、こっちの方が余計に脳が蕩けそうだった。


「やっぱ、んむ、美味し……っ」


 上は長門さんに味わわれ、下はエマ先生に吸われていく。

 天国のような地獄だった。

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