体育の授業

 体育の授業はバレーだった。

 ボクは端で見学していた、いきなり真横にボールが飛んでくる。


「うわぁ!」

「きっひひひ! うわぁ、だってよ!」

「あ、危ないじゃないか!」


 明らかにボクを狙ってボールを飛ばしてきた。

 リクくんは笑って、女子達とハイタッチ。

 だが、斜め前方には表情に陰が差した長門さんがいた。


 カキンっ。


 またホームランを打ち、野球ボールが真っ直ぐリクくんに飛んでいく。


「ひゃは! 同じ手は通じないぜ!」


 顔を両手で庇った。が、ボールは別の場所に当たった。


「んぐううううううっ!」

「リクくん!」


 前かがみになり、股間を押さえるリクくん。

 離れた場所から見ても、冷や汗を掻いたのが分かる。

 どうやら、玉に、球が当たったらしい。


 転がる野球ボールに、とてとて小走りで駆け寄り、拾い上げる。

 長門さんは「チッ」と舌打ちをしてリクくんを睨むと、ボクの方にきた。


「ずっとバット持ってんの?」

「これあると落ち着くもん」

「……殺人鬼の言い訳だよ」


 自分でも何言ってるか分からないけど。

 長門さんの行動がどんどんエスカレートしている気がした。

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