お風呂に行きたいから
夜。お風呂に行こうと思って、支度をした。
ゴンゴンゴンゴン。
ノックの音で、大体誰が来たか分かってしまう。
乱暴で強盗に来たんじゃないか、ってくらいの荒さは長門さん以外にあり得なかった。
玄関の扉を開けると、そこには長門さんがいた。
「うす!」
タンクトップにスカートの姿で、ヘラヘラと笑い、片手を挙げる。
「どうしたの?」
放課後の一件で、不思議と角が取れてしまったボクは、普通に迎え入れてしまった。
「お風呂行こ」
「ん? いや、今、行こうとしてたけど」
「違う違う。街の方にある、銭湯」
意味が分からなかった。
「いいよ。お金ないし。もうちょっとで、男湯の番だから」
「あー、今日は止めとこ?」
「どういう意味?」
「――壊れたから」
「は?」
そして、ボクは気が付いた。
長門さんが後ろに持っているものに。
「なんで、バットなんか持ってんの?」
「何ででしょう」
ゴリゴリと地面を擦り、舌を出して笑う。
「え、待って。お風呂が壊れたってなに? え? 意味分かんない」
「んー、なんか、ボイラーの調子がおかしいみたいよ」
こいつ、何かやったな。
「あのさぁ。ボク、長門さんのこと見直したのに! どうして、次の瞬間、奇行で自分の首を掻っ切るんだよ!」
すっごい、カッコいいなって心から思った。
その後が、これである。
「街に遊び行けるんだから、いいじゃんか」
「エマ先生は? 寮母だから言わないと!」
「ん。言っといた」
手回し早いな。
「行こうぜ!」
手を引かれて、一歩外に出る。
すると、口が近づいてきて、自然と顎が持ち上がった。
「ん……」
目を開けたままのキスだった。
「今日は、まだキスしてなかったから。ちょうどいいやんね」
「べ、別に、しなくても……」
「んー、なんかさ。初めは、もうちょい、ソフトにやって、仲良くなるだけだったんだけどさぁ」
にへら、とはにかんだ。
「ハルくんとのベロチュー、ハマっちった」
ストレートに、自身の気持ちをさらけ出すのだった。
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