告解部屋

 ボクはふしだらな女子によって、体がおかしくなった。

 今日一日、ずっと舌を吸われ続けた。


 二時限目後の休憩時間。


「アタシ、胸は小さいからさ。楽しみないと思うけど」

「……ふぅぅ、……ふぅぅ」

「ふふん。えいっ」


 ぷに、とした感触が夏服越しに伝わる。

 手の平にはブラの感触があった。

 その奥で潰れる小さな膨らみが、長門さんの乳房。


 顔が熱くて、爆発するんじゃないか、と思った。


「初めて?」


 黙って頷き、固まってしまう。

 それから、再び舌を吸われて、10分間長門さんを感じた。


 三時限目後の小休憩。


「だ、誰か来るってば」

「しーっ」


 階段の踊り場で、後ろから抱き着かれ、ハラハラした。

 後ろから首を伸ばし、体を撫でられながら、またキス。


「あたひのこと、ふき?」

「ひ、ひあい……」

「むーっ」


 怒った長門さんが、乳首に爪を立てた。


「ヂュ~~~~~~っ!!」


 踊り場に響くぐらいの音量で、唇を吸ってくるのだ。

 執拗に胸を撫でまわし、口を開けたら、すぐに舌が入り、絡みついてくる。


 逃れようと外に出たら、今度は舌ごと吸われ、きつく首を抱きしめられた。


 この調子で、休み時間がある度に、一日中吸われ続けたボクは心身ともにクタクタ。


 礼拝堂にきて、告解部屋に来たというわけだ。


「悩みを教えてくださいな」


 告解部屋は、ブラックボックスになっていた。

 通常よりも暗くしており、生徒のプライバシーを守っているようで、狭い個室は顔が見えない。


 また、告解部屋は二つ並んでいるのだが、この部屋と部屋の間隔も空けており、声が聞こえないようにされている。


 入る時に見えたのは、部屋の真ん中には仕切り板があり、真ん中には穴が空いていた。


 ボクが入って、鈴を鳴らすと、しばらくして先生が入ってくる感じだ。


「実は、……クラスメイトの女子から、嫌がらせをされているんですが」


 ちなみに、告解部屋、と呼んでいるが、本来の用途とは少し異なっていた。


 早い話が、カウンセリングみたいなものとして、ボクや他の生徒は利用している。


「嫌がらせ、ですか」

「はい。今日は、一日中嫌がらせされて、もう、嫌になってきて」


 暗闇の中で、硬くなったままの股間を握る。


「どのような嫌がらせでしょうか」

「え、……と、それは……」


 さすがにキスをされました、なんて正直に言えるわけがない。


「スキンシップが、ちょっと、過激かなって」

「どういうスキンシップでしょうか?」


 なんか、質問責めされているみたいだ。


「ま、まあ、なんか、くっついたり……」

「ハルくん。きちんと答えてくれないと、分かりませんよ?」


 そこで気づいた。


「エマ先生?」

「あ、いけない」


 本来の告解部屋は、聞き手が黙って聞くものだけど。

 本来のとは違う分、変なところで緩かったりする。


 エマ先生は咳ばらいをした。


「そっちに行きますね」

「え、ええ!?」


 扉の開く音が向こうから聞こえる。


 そして、カーテンが開くと、にこっと笑ったエマ先生が部屋に入ってきた。

 カーテンが締まるなり、再び暗闇に戻り、ボク達は狭い個室の中で、二人きりになった。


「せ、先生。まずいですよ」

「生徒が困っているのに、放っておけません。何をまずいことがありますか」

「だって、……その」


 エマ先生の匂いは、少しだけ強い。

 蒸れていて、鼻孔の奥に女性特有の匂いが届いてくるのだ。


 ボディソープと汗の混じった香りは、今のボクには刺激が強かった。


「誰に、嫌がらせをされてるんですか?」


 頭に手を置かれると、優しく引き寄せられる。


「スン、スン……」


 何かを嗅ぐような音が頭上からした。


「誰かまでは、ちょっと」


 脅しの道具がある限り、下手に名前を出せなかった。


「スー……っ。ふぅ。あの子かしら」


 声は優しいけど、言葉にできないほど、今のエマ先生は艶があった。

 やがて、頭を撫でている手が離れ、首筋や顎の下から、生温かい吐息が掛けられる。


 息遣いは間近から聞こえ、ボクはドキドキとした。


「スン……スン……。ハルくん」


 股の所から声が聞こえ、「は、はい」と体が固くなる。


「もしかして、……いけないこと、したのかな?」

「……それは」


 手を握られると、太ももに温かい感触があった。


「そっかぁ。ハルくん、校則違反しちゃったのかな」


 校則で責められるのが怖くて、ボクは首を振った。


「何も、してないです。ほんとです」

「うん、うん。大丈夫だから」


 手を擦られた。


「私に任せて。ね?」


 エマ先生の頬が手の甲に当たっていた。

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