人がいるのに……

 風紀委員の仕事を終えて、ホームルームを受けた。

 それが終わると、一時限目の授業が始まる。


 授業後は、休憩時間。

 その時間に、ボクは図書室にいた。


 職員がカウンターにいて、他には誰もいない図書室。

 室内の目立たない隅っこに誘われ、ボクは本棚の仕切りを掴みながら、顔を持ち上げて、ジッと耐えた。


「あむっ、……んっ、……美味し……」

「はぁ、はっ、ひ、とが……」

「そんなの関係ありませ~ん。……んちゅっ」


 水音が鳴る度に、ボクの意識はカウンターの方に向けられる。


「ほらほら。舌出して」

「嫌だ。こんなの、おかしいってば」

「焦らすなら、こうだぞ」


 股間に感触があった。


「う」


 人差し指と中指を折り曲げ、第二関節で膨らみを挟んでくる長門さん。

 手つきが優しく、ねっとりとしていて、ボクを見つめる表情は、とても楽しそうだった。


「し、たなんて、汚い……」

「そう? アタシ、誰の舌でも吸いたいなんて思わないけどね」

「……でも」

「中学の時はさ。女の子の舌で我慢したのよ」

「は?」


 唾液で濡れた唇を舐め、妖しげに目を細める。


「女子の戯れってやつ? キスしたことねえ、ってバカにしてくるから。やってやったの。そしたら、舌入れてくるからさ。ベロ舐めた時、股の所、すっごい痺れて。癖になったっていうか。でも、気持ち悪いデブの舌を吸いたいとは思わないじゃん?」


 頭にはリクくんの顔が浮かんだ。


「アンタ可愛いし、イジメると生きがいを感じるっていうかぁ」


 性格が最悪すぎるよ。


「仲の良い男子欲しかったから、ちょうどいいやって」


 耳に熱い吐息が掛けられた。


「アンタのベロ。舐めてみて思ったの。美味しい、って」

「う、うぅ」

「相性良いのかもね。ちと、夢中になってきた感があるんだよね」


 尻まで撫でられ、首筋には舌が這う。

 唾液で濡れた首筋は、どこからか入ってきた隙間風に当たると、ひんやりと冷却され、涼しかった。


「お互いに、勉強になると思うんだ。ね」

「こんなの、許されることじゃ、ないよ」

「知らな~い。つか、ハルくんのこと、もっと教えてよ」


 ズボン越しに、股間を優しく掻かれて、腰が跳ねてしまう。


「はい。あ~ん」

「……くっ」


 ぐり、と膨らみを摘ままれ、強い刺激に声が出そうになった。


「あーん」


 恐る恐る口を開けて、舌を出す。


「……は……む……」


 長門さんの口の中は、温かった。

 舌を通して、脳まで刺激が伝達する。


「ふぅ、ふっ、うぅ」


 クチュクチュとなる、卑猥な水音。

 こぼれた唾液が顎を濡らして、意識がボーっとした。


 そこで、チャイムが鳴る。


「――なんだよぅ。ここまでかぁ」


 名残惜しそうに舌を離し、長門さんが離れる。


「……はぁぁ、はぁ、もう、ダメだ。立ってられない」

「行くよ。遅れたら、先生に怒られちゃう」


 跪くボクを見下ろし、足蹴りしてくる。

 だけど、長門さんは少しだけジッと見下ろした後、また屈んで、顔を近づけてきた。


「――ズズっ、ヂュリュルルル……ッ!」

「んん!」


 大きな音を立てられ、心臓が飛び跳ねた。


「アハハハハ! んじゃ、先行くね!」


 スキップをして、出て行く長門さん。

 ボクは腕で口元を拭い、心臓を押さえた。


 こんなの、頭がおかしくなる。


 股間はずっと痛いし、心臓がずっとドキドキしたままで、体の震えが治まらなかった。

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