天敵が笑う

「そこ、スカート短いです! ちょっと! ピアスは校則違反ですよ!」


 今日も風紀委員として、校門前に立ち、警笛を鳴らす。

 ヒナ姉ちゃんはトイレに行くと言っていたので、今はボクと他の生徒3人態勢だ。


「じ~~っ」


 隣から視線を感じるが、ボクは目を合わせないようにした。


「え、ロザリオですか? ろ、ロザリオは……」


 ギャルっぽい子が気だるげにヘソを見せてきた。

 へそにされたピアスなのだが、信仰のためにロザリオ型をしているという。


 宗教が絡むと、こういう所で躊躇ってしまう。


「いいんじゃない?」


 隣に立ってる長門さんがケロっとして言った。


「か、勝手に答えないでよ! あ、ああ!」


 笑顔でロザリオピアスの女子が去っていく。


「あの、風紀委員じゃないのに。どうして、ここに立ってるんですか!」

「やだなぁ、ハルくん。アタシ達付き合ってんじゃん」

「ちょ、っと!」


 思わず、腕を叩いた。

 間違っても、そんな事実はない。

 ないが、この学校で交際関連の事を口にすると、先生がうるさいのだ。


 やっていなくても、詰問きつもんされるし、面倒ごとは避けたかった。


「交際なんてしてないでしょ」


 すると、長門さんが耳打ちをしてくる。


「昨日ベロチューしたじゃん。また、やったげるから」

「い、いいですよ」


 股間が、痛くなってきた。


「これ、見てみ」

「へ?」


 スマホの画面を見せられた。

 画面には、ボクと長門さんが映っている。

 アングル的に、横から撮ったようで、クチュクチュと音を立てながら、舌を吸われているボクの映像が流れていた。


「や、まっ、て」

「ア、ハハハハっ」


 楽しげに笑い、距離を取られる。


「じゃ、後で。図書室で待ってるから」

「な、何てやつなんだ」


 ボクは脅されて、言う事を聞かざるを得ない状況になってしまった。

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