吸いつくす生活の始まり

 今日に限って、ヒナ姉ちゃんがいなかった。


「い、痛いよ!」


 空き教室に連れてこられたボクは、乱暴に突き飛ばされた。

 長門さんは笑っているけど、目が怖くて、ボクの前に立って、じっと見下ろす。


「チクったろ」

「な、なにが」

「とぼけんなよぉ。ハルくんしかいないじゃん」


 やっぱり、窓ガラス割ったことをチクったのが、ボクだって分かって根に持ってるんだ。


「この学校ってさぁ。狂ってんじゃん? だからぁ、アタシ処女ってことで、在籍する権利とか、この学校で学ぶ資格とかはぁ、問題ないってことでぇ。今回は許してあげるって言われたんだよね」


 処女性って、宗教が絡むとそこまで重要視されるのか。

 時代が時代なら、男子禁制だろうな。


「で、ケツをぶっ叩かれまくったのよ。ほら」


 スカートを捲り、お尻を突き出してくる。


「え、ちょ! 何考えてるんだよ!」

「いいから、見て見てぇ。テメェのせいで、ぶっ叩かれたケツぅ。見て~」


 顔を背けると、今度は頬を引っ張られた。


「見ろ、って言ってんの」

「……ふぅ、ふぅ」

「分かった?」

「う、うぅ」


 捲り上げると、目の前には、白くて小ぶりなお尻が露わになっていた。

 下着はお尻の割れ目が丸見えの水色パンツ。

 目で生地を辿ると、後ろに生地はなくて、前の方にだけ水色の生地がある。


 ボクは開いた口が塞がらなかった。


「どう?」

「どう、って。これ、……なに?」

「オープンショーツ? っていうらしいよ。面白そうだから買った」


 面白い感覚で、身に着けちゃうのか。

 よく見ると、尻の割れ目あたりに、ミミズ腫れになってる所がある。


「……腫れてる」

「そうそう。本当は手でやるらしいけど、こっそりムチでベチベチされたんだよね。イラつくぅ♪」


 器用に尻だけを左右に振り、自分で自分の尻を叩く。

 こんな真似をしているのに、どこか圧を感じるのだ。


 そして、ボクは全く女の子に免疫がなく、女の子の肌なんて見たことがないから、股間がとんでもない事になっていた。


「くっ」

「あはは。アンタのせいで、ケツ叩かれてぇ、絶対にリベンジしてやろうって気持ちになったんだぁ」


 こっちに向き直ると、長門さんはボクをじっと見つめてきた。


「でも、ハルくんって、超可愛いからさ。入学時から、ずっと仲良くなるきっかけ探してたわけ。で、今回の件じゃん? そりゃ、もう、この機会逃さないでしょ」


 股間を押さえていた手を取られ、手首には冷たい感触が当たった。


「な、なに?」


 カチャ。

 見ると、両手には手錠がはめられていた。


「何で手錠なんて持ってるんだよ!」

「いやいや、無理やり犯す時って、抵抗されるじゃん。だったら、ねぇ?」


 どういう思考回路してるんだよ。


「い、いやだ! 怖いよ!」


 さすがに、意味が分からないし、圧は酷いし、怖くてボクは立ち上がった。


「待てってば」


 すると、再び突き飛ばされ、床に転んだ。

 寝返りを打って、ゆっくり近づいてくる長門さんから逃れようと、必死に後ずさる。


「だいたい、自業自得じゃないか!」

「あはは、うるっせぇ」

「こんなの、ゆ、許される行為じゃないよ! 今すぐ、これを外して!」

「わかった♪」


 絶対に外す気なんてないだろう。

 そういう顔をしていた。


 そして、彼女はボクの腰に跨り、ニヤニヤと笑う。


「……んじゃ、仲良くしよっか?」


 ボクの人生で、一番信じられない事が起こった。

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