世界史の授業中。

 リクくんが、チラチラと首を曲げては、どこかを見ていた。


 隣の席なので、制服の擦れる音が聞こえ、気になるのだ。


「リクくん。授業中だよ」


 指を折り曲げてきたので、ボクは先生の目を気にしながら、体を傾ける。


「なんかよぉ。スズナに見られてんだよ」


 馴れ馴れしく名前で呼び、ニヤニヤとしていた。

 にんまりとしつつ、また首を曲げて、席に座る長門さんの方へ視線を送る。


 ボクもそっちの方を見る。


 ――長門さんと、モロに目が合った。


「う……」


 にやぁ、とした笑顔。

 目が合うなり、手を振っていた。


「なんだよ、てゅっふ。俺のことが好きなら、そう言えよぉ」


 口に握りこぶしを当て、リクくんは大喜び。

 舌なめずりをして、今にも声を掛けそうだった。が、ボクがそっちを見ると、長門さんがニヤニヤとして、頬杖を突いている。


 ずっとボクを見ており、何か企んでいた。


 顔を見れば下心が透けて見える。


 なんだろう。

 何を企んでるんだ。


 身に覚えはある。

 たぶん、チクったことだ。

 あれで、目を付けたのだろう。


 チラ。と、もう一度、見る。


「…………っ❤」


 自分の舌を指した後、にっと笑う。


 まるで意味が分からなかったが、邪悪な笑みには、どこか艶を感じてしまい、ボクは見るのをやめた。

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