鈴谷 ハルト

 ボク――鈴谷すずやハルトは、風紀委員だ。


 片腕には、『風紀委員』と書かれた腕章をつけ、みんなより早く身だしなみをチェックし、警笛を鳴らして、風紀の乱れを取り締まっている。


 今日も校門前に立ち、風紀委員長の『常見とこみヒナ』。

 通称ヒナ姉ちゃんと道行く生徒を注意していた。


「そこ! スカートの長さが、おかしいですよ!」


 スカートを腹巻にしている女子がいたので、笛を鳴らす。


「あ、ハルくんだ」

「今日も早起き、えらいね」


 頭を撫でられたので、ボクは頭にきて、その手を払いのける。


「やめてください! あと、スカート直してください!」


 見た目からして、ギャルのような生徒だった。

 いくら、礼拝堂のある、由緒正しい学園とはいえ、こういった生徒は一定数いるものだ。――と、いうのをボクは実感していた。


「えぇ~? ダルいよ~」

「ダメです。ハレンチです! エッチなのは、厳禁です!」

「ぶ~っ」


 ボクが怒ると、腹巻女子は渋々といった風に、スカートを直す。

 その際、食い込みの激しいパンツが見えてしまい、ボクは固まる。


「なんだ。ハルくん見てんじゃん」

「え、あ、み、見てないです! 不潔です!」


 汚らわしい女子から距離を取る。

 彼女たちは、自分達の汚れを理解していない。


 あろうことか、風紀委員のボクを見下して、ケラケラ笑うのだ。


「はいはい。あんまり、ウチの子イジメないでね」


 ヒナ姉ちゃんが言うと、「はーい」と返事をして、女子達が去っていく。


「な、何で、布面積が少ないんだ……」


 Vの字になったパンツは、男にもあるけど、ボクは履こうと思わない。

 履く奴の気が知れない。


「だいじょうぶ? 顔真っ赤だよ?」

「大丈夫。ヒナ姉ちゃんは、見てて。ボクがしっかり、取り締まるから」

「うん、うん。えらいね」

「……へへ」


 ヒナ姉ちゃんに褒められると、素直に嬉しかった。

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