厳しい家庭

「不純異性交遊など、言語道断。ハルト。これからの学園生活は、きちんと学業に励んで、とにかく勉強しなさい。他の事はやらなくていい!」

「はいっ!」


 地方都市にある実家で、ボクは両親に約束をした。

 ボクの通う学園は、元女子高。


 私立聖ゼネレ学園。

 この学校は、いわゆるがある学校だ。


 先生たちは、全員シスター。

 頭にはフードを被り、上から下まで黒い修道服に身を包んでいる。


 だが、生徒の全体数は少ない。


 1クラス、大体30人。

 1学年に、3クラス。


 なので、生徒の総数は、端数を入れると約280名となる。


 しかも、困ったことに、男子の入学希望者がほとんどおらず、9割が女子で、残りの1割が男子という、何とも居づらい環境だった。


 ボクがこの学校に進学を希望したのは、ずっと前からお世話になっている、幼馴染のヒナ姉ちゃんが、「来い」と誘ったので、秒で頷いたのだ。


 学園の環境を除けば、実は地方都市から離れた、良い場所に立地している。


 緑と海に挟まれた田舎の土地。

 車を西に走らせれば、すぐに山へ着く。

 東には、徒歩でいける距離に海がある。


 自然に恵まれた環境で、学園の周囲には、遊ぶところがほとんどない。

 だから、生徒たちは遊ぶときに、バスで駅二つ分離れた町へ遊びに行き、リフレッシュするのだという。


 そして、実家から離れた場所に通うため、ボクは学園の中にある、男子寮に住むことになった。


 一人暮らしの練習だ、とのこと。


 女子寮は二階建てのコンクリート造り。

 対して、男子寮は古めかしいプレハブ小屋のような建物。


 元々、物置として使っていた小屋を改築したらしかった。

 部屋は小さくて狭いのが、3部屋。


 男子の人数が少ないのもそうだけど、寮を利用する生徒自体が少ないため、女子寮も同様に、空き部屋が目立つのである。


 ボクの場合は、3部屋ある内の2部屋が空き部屋だ。

 だから、本当に一人暮らしみたいになっている。


 そして、この3畳半の部屋で起きたら、玄関のそばにある洗面所で、割れた鏡を見ながら、身だしなみを整えるのだ。


 鏡に映ったボクは、情けなくて好きになれなかった。


 身長は高校一年にもなって、141cm。

 チビだ。


 今までは、お坊ちゃまヘアーだったけど、前髪だけを伸ばし、七三分けにして誤魔化している。


 全体的にちんちくりんで、自分が嫌になる。

 けれども、ここは都合よく考えて、「勉強には関係ない」と自分に言い聞かせ、気にしないようにしていた。


 そんなボクが、風紀委員に誘われたのである。

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