第20話 いつもの日常
——いつもの朝、目を開けると自分の部屋の天井が見える。
オレは朝は苦手なので起きるのが遅いのだ。
なので目が覚めると基本的に昼近いのだ。
ベッドの中で起きるのが面倒くさいからこのままもう一回寝ようかと思うが、この世界に来てからそれは結構減ったのだ。
その理由は明確だ。
昼にベッドから起き上がり自分の部屋を出るといい匂いが嗅覚をくすぐる。
オレはその匂いがするところに行くのだ。
そこは居間と台所が一緒になっている部屋だ。
その台所に立って料理をしているのが、オレがこの世界で初恋をした相手、美少女男の娘のハルさんだ。
ハルさんは料理をしていたが、オレに気がつくと、料理の手を止めてニッコリとオレに微笑んでくれる。
「おはよう、トビくん!もうお昼だよ」
ああ、めっちゃ可愛い、……だが男だ!
白くて柔らかそうな肌、綺麗なショートの銀髪の髪、そして深紅の瞳はいつ見ても綺麗だ
……だが、男だ!
ハルさんはピンクのエプロンをしている、これではまるで新妻のようだ、……だが男だ!
「結構寝てたね、疲れてたの?」
「ええ、昨日は随分作業に打ち込みましたからね……」
「作業もいいけど、体は壊さないようにしてね!」
「はい!」
ハルさんはいつもオレのことを気遣ってくれるのだ。
日本ではオレのことを心配してくれるのは大体は親ぐらいだったからなぁ……。
他の連中なんてオレに見向きもしなかったからな……。
オレはハルさんが作ってくれたお昼のごはんを食べ終えてから地下の作業場ことオレ帝国へと行く。
いつもの一日はここから始まる。
むしろこの作業場がオレの生活場所になっているような気がした。
オレはそこで行う作業はアーマーの修理と整備、そして新しい装備の開発に
オレはジャイアントコングとの戦闘でわかったことは、やはりアーマーをもう少し硬く頑丈にする必要がある。
凹みやキズ、さらにはアーマーが欠けてる部分があったのが難点だった。
これをどう修繕していくかが問題になってくるが、オレはその解決策をやっと見つけたのだ。それはとある地方の村にあるらしい。
その村には硬く頑丈な鉱山の石があるみたいだ。オレはその鉱山石を調達するためにあるものを造っていた。
それがいつでもどこでもアーマーを取り出し隠したりできる装置、
その名のとおり空中にオレが戦闘で使うアーマーを保管するための保管庫だ。
これを造ってる最中にふと思った。
オレはとあるハリウッド映画のヒーローを意識しながら造っていたかもしれないな…。
空中武装保管庫を造るときに必要なのはまずは魔石、魔物の骨、女神の髪の毛、そしてハルさんの魔力で造っていく。
ハルさんにはいつも魔力を補充してもらってるが、体調の方は大丈夫かと聞くと平然と笑顔で大丈夫と言うのだ。
魔力って使い続けると結構消耗が激しいと思うけどハルさんは何事もなかったかのようにしているから大丈夫なのだろう。魔女の生まれ変わりって結構すごいのかな……。
そんなことよりもジャイアントコングの一件についての出来事を話そう。
オレはあの後アルエさんが女だと知り、とても驚いた、驚きすぎて固まった。
そう思うと確かに女性には見えなくないが、どうも胸のあたりが……、おっとこれ以上はやめておこう。
……なんかヤバそうだから。
オレはとりあえず勘違いをしていたことに気づいたのでよかったとしよう。
だがそれまでアルエさんを男だと思ってたことに腹が立つ……。
…てか、この世界はどうなってんだ?
ハルさんといい、アルエさんといい、美男美女が多いのはいいことだが、女だと思ってたハルさんは実は男だったり、男だと思ってたアルエさんが実は女だったり、いろんな人がいるんだな……。
オレはローウェン村の人たちとは別れてからギルドへと直行、魔物討伐を終えたと言うとまたアイシャさんに驚かれた。
あの失恋男のトビくんがと、全くひどい理由だった。
てか、なんで失恋したことを知ってんだ?
オレは何一つしゃべってねぇぞ!
ジャイアントコングの報酬は金貨300枚とかなり報酬額でオレの懐は潤いができたのだ。
なのでその報酬を使って魔石をたくさん買いすぎたせいで残り金貨三枚、なんとも浪費癖は直りそうもない、直す気もないが……。
金貨が少なくなっているのに何故かハルさんは食材をありったけ持って帰ってくるから不思議でたまらない、もしかして闇……っと、これ以上はやめておこう。
そしてオレの渾身の作品、空中武装保管庫を造りあげた。
その形は丸い球体の形をしており、外側は特殊ガラスコーティングで外から中が見えないようにしてある。
中にはオレのゴールドアーマーの他、多数の武器があるが、これはまた別の機会で紹介しよう。
この空中武装保管庫には魔石を10個も投入してある。それは空中なのでやはり魔力が無くなるのは困る、なので魔石を10個確保する必要がある。
この魔石はジャイアントコングを倒したときの戦利品としてアイシャさんからもらったものを分解したものにさらにハルさんの魔力を上乗せするとかなりの魔力が補給されるのだ。
これなら恐らく10年は補給しなくて済むだろう。
さらにこの球体の骨組みは魔物の骨を錬成で使って造りだしたものだ。
そしてそこに女神の髪の毛をいい感じに投入すれば空中武装保管庫の出来上がりだ。
オレは達成感に満ち溢れていた。
するとハルさんがコーヒーを淹れて地下の作業場へとやってくる。
「トビくーん、コーヒー入ったよー!」
「……あ、どうも!」
これがオレの日常、何もない誰にも縛られない、自由に生活して生きていける最高の異世界生活。なかなかロマンがあるなぁ……。
プルルルルルルルッッッッ!!!
ああ、オレの最高の時間を壊してまで鳴り響くギルドからのメッセージの音。
アイシャさんはオレに休むなと言ってるように聞こえた。
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