第19話 とんだ勘違い
——
オレの闘争本能が心の奥底からみなぎってくる。
オレはロープを西部劇に出てくるカウボーイみたいに振り回す。
ロープに電流が流れ込み雷のようにピカピカと光り出す。
…それじゃ、第3ラウンド開始だ!
雷武装を造るときに必要なものはハルさんからいただいた魔力を胸のアーマーに埋め込んでいる魔石に付与して、女神の髪の毛を何本か拝借して合成する。
あとはアーマーを雷の耐性に仕上げると、雷武装のでき上がりだ。
オレは上空からジャイアントコングを目掛けてサンダーロープを放つ。
サンダーロープは紆余曲折しながらジャイアントコングの身体を巻き付けると、伸縮の力で強く締め付ける。
ジャイアントコングは締め付けられる苦しそうにもがいているがそう簡単に解けないのはわかっているのに無様な姿だ。
そのロープにオレは左腕から雷を大量に一気に注ぎ込む、雷の電流はロープを瞬時につたっていき、ジャイアントコングに電気ショックを与える。
ジャイアントコングの身体の周りに青白い雷が大放出されて目がチカチカするくらいに光り放つ。
ジャイアントコングは電気ショックを与えられて苦しみで獣の叫び声を上げている。
周りの景色が電気によって影ができている。
オレは巻きつけてたロープを解き、左腕のアーマーに縮小して戻す。
ジャイアントコングは膝から崩れて倒れるが、ギリギリ持ち堪えたようだ。
オレはジャイアントコングのHPを測定する。奴はかなりのダメージを負ったからHPは下がっているはずだ。
……レベルは30もあったのか、手強いわけだ。……HPは1000もあったのが今は100に減っている。
…これはだいぶダメージを与えられた。
だがまだ安心はできないやつを戦闘不能にしなければ倒したとは言えない。
ならば、最後の大勝負だ!
「……
オレがそう言うと背中のアーマーから黒い1Mくらいの棒が出てくる。
オレはその棒を手にとるとその棒はさらに雷を纏い、ビリビリと電流をチラつかせる。
それを見たジャイアントコングは歯茎が見えるくらいに鼻息を荒くして興奮しながらオレを睨みつける。
何回睨んでくるのやら、でもこれでお前を確実に仕留める。
オレは一気に魔力使い、ジャイアントコングが追いつけないスピードで飛びながら周りを固めていく。
その黒い棒を六個に分解してから、ロープで一個ずつ繋いでその六個をジャイアントコングを中心に六つの星の形を描くように地面に刺していく。
ジャイアントコングはそこから逃げ出そうとするが、オレは六箇所の位置に置くたびに翻弄するように体当たりしながら攻撃していく。
そして最後の一個を地面刺したら、六芒星の出来上がりだ。
上から見るとまさに星の形に出来上がっておりその中にジャイアントコングがいる。
オレはそれを六芒星の外側で見る
ジャイアントコングは抜け出そうとロープを切ろうとするが、それはできないのだ。
そのロープにはもう電流が流れているのだ。
触ったときに静電気の10倍の威力で身体が痺れるだろうな。人間は即死するだろうが、魔物は少しビリつくだけだ。
そして最後の大仕上げ、オレが最後に突き刺した一個の黒い棒を思いっきり殴るように叩く。
するとオレが叩いた箇所から順番に六芒星の形を描くように青白い電流の光が瞬時にロープを伝っていき、その電流がドーム型の結界を作り出し、ジャイアントコングは閉じ込められる形になった。
「…終戦だ、ジャイアントコング」
そう言うと六芒星の中の電流が強くなり、ジャイアントコングに電気ショックが与えられる。
もがき苦しみ、その場から動けずにただ正気を吸い取られるみたいに電流が襲う。
しばらくしてジャイアントコングは膝から崩れ落ちるようにうつ伏せで倒れた。
そして青白い光の電流が獲物が死んだことを悟るように一瞬でドーム型の結界は消え、六芒星の形から光が消えた。
オレは念の為にジャイアントコングの近くへ飛んでいき、息をしてるか確認をするがあれだけの電気ショックを喰らったのか生の欠片もなかった。
こうしてジャイアントコングの戦闘は幕を閉じた。
…今回の魔力の消費は抑えれたな…。
オレはその足でローウェン村へと戻った。
ローウェン村では今村の人たちが傷の手当てをしているようだ。
オレは空からその地に降りたつと、子どもがオレのことをゴールドアーマーだと嬉しそうに喜びながら大声で叫ぶ。
その声に気づいてマリアさんたちが出てきた。
「ゴールドアーマー殿、終わったのですか?」
マリアさんたちは心配そうに聞いてくる。
おそらくジャイアントコングの脅威に怯えているのだろう。
「大丈夫だ。もう心配することはない、奴は倒した」
するとその場にいた村人たちからドッと歓声が湧き起こった。
泣きながら抱き合ったりする姿や喜んで飛び跳ねる者も、皆それぞれの感情が溢れていた。
「ゴールドアーマー殿、今回は助けていただき感謝いたします!」
マリアさんは騎士らしい挨拶でオレに感謝してくる。
「いや、これがオレの仕事なんで……」
「なんと!勇敢なお言葉でしょう!」
横にいたクールなイケメン美男子がオレに向かって憧れの眼差しを向けている。
…いや、どういう感情だ、それ。
オレはふと村人たちの顔を見ると皆オレに笑顔で微笑んでいるように見えた。
ふと手を叩かれる感触がしたので下をみると、小さな女の子がオレに笑顔であるものを手渡してくる。
「………これは?」
「助けてくれたお礼だよ!」
それを受け取り見て見ると、食べかけのクッキーみたいだった。
…食べかけをよこすとは、すごい度胸だな。
「ああ、ではありがたく受け取るよ」
そう言うと女の子は笑顔で喜んで抱きついてきた。
オレがこんなに感謝されるとはな、今までの人生なんかそんなこと一度もなかったのにな、この世界に来たおかげで何か失った感情がオレの中で溢れてくるような気がした。
「そうだ!ゴールドアーマー殿、ぜひ王都から改めてお礼を差し上げたいのだが……」
「ああ、いや結構だ。急いでますので……」
「そう言わずに……」
「そうですよ、これは偉大な功績なので……」
マリアさんとクールな美男子がそう言ってくれるのはありがたいが、オレはあんまり褒められてないので照れ臭かった部分があり、その場から逃げたい気分だった。
あとはこの二人をあまり見られないでいた。
「では、オレはこれで失礼、結婚してからもお幸せに!」
「……あ、あの!」
オレはそう言って飛び立つ姿勢になると、マリアさんが呼び止めてきた。
「なんだ……?」
「いや、その、私は……結婚する予定は、ないのだが……?」
「……………は?」
…え、どういうこと?お二人は結婚するんじゃねぇの?……え、違うの?……あ、ヤベ、頭が混乱してきた。
「……えっと、お二人は付き合ってるんじゃ……?」
するとマリアさんとクールな美男子が顔を見て見合わせるとプッと笑い出した。
「いやだな、ゴールドアーマー殿!」
「……へ?」
「私はアルエと申します。マリアと同じ王国騎士団の騎士、こう見えて女だ」
そのクールな美男子は騎士らしい挨拶して笑顔で言う。
えええええええええええ!!!!!
オレはしばらく思考停止に陥ったあと、大きな声で驚いていた。
オレはとんだ勘違いをしていたようだ。
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