第18話 ジャイアントコング

——ジャイアントコングとの戦闘—


オレとジャイアントコングの拳が互いにぶつかり、その衝撃で地面に亀裂が入り、歪む。


オレはもう一撃喰らわすため距離をとる。


ジャイアントコングも興奮し、高速でドラミングをして、威嚇する。


オレは距離を取ったあと、空中に浮遊してから、火炎増強ファイヤーストロングで一気に距離を詰めていく。


ジャイアントコングも大きな腕を振り下ろす態勢になり、オレと同時に一撃を放つ。


またお互いの拳がぶつかる、そしてそれが合図かのように双方の攻撃ラッシュが炸裂する。


殴り合っている最中に聞こえてくる、金属音と骨がぶつかる音が凄まじい戦いを物語る。


その最中、ジャイアントコングが振り上げた拳がオレの胸に一発命中する。


オレはその勢いで吹っ飛ばされるが、アーマーの火力で姿勢を立て直す。


だが顔を上げるとすぐ目の前にジャイアントコングが腕を振り下ろそうとしている、咄嗟にオレはそれを手のひらから炎弾フレイムガンで応戦する。


炎弾が顔に命中し、ジャイアントコングはふらつき、膝をついた。


だがそれが逆効果になったようだ。

ジャイアントコングはさらに興奮状態になり、鼻息は荒く、牙を剥き出してオレを睨みつける。

完全にお怒りのようだ。


…これはかなり荒れる戦闘になるな…。



アーマーも拳の跡で凹んでいる。

ここでの戦闘は苦戦が強いられてくる。あまり派手に動けない分こちらが不利だな。村の建物を破壊するのは目にみえる。


ならば……、場所を広くすれはいいだけだ。


オレは火力で浮遊したあと、左腕を前に出す、

だが炎弾を打つわけではない。

アーマーに新装備として新たに付け加えた武器、いや……ロープというべきかな。


そのロープをどうするかって、そんなのは決まっている。

ジャイアントコングに巻き付けて荒野へと連れて行くためだ。


オレはアーマーの左腕の下からロープが弓矢のように放たれる。

そのロープはジャイアントコングのデカく頑丈な体にグルグルと巻き付いた。


ジャイアントコングは必死にほどこうと抵抗して、暴れ回っているがこれはそう簡単にほどける訳がない。


これを造るためにオレは何回も実験を積み重ねた。

素材はハルさんの魔力をベースとした魔石をハンマーで砕き、鉄を釜で溶かして細長い一本の線を造る。

次に頑丈なものに仕上げるため鍛治スキルを応用して、鉱山の石を炎で溶かす、それをまた細長い一本の線に混ぜ込む、最後に伸縮自在に錬成すれば、鋼のような硬さで頑丈なロープのでき上がりだ。あとは一つ隠し武器があるがこれは使うかどうかわからないからな…。


「それじゃ、一緒に空の旅を楽しもうか…?」


そう言うとさらにジャイアントコングは暴れ出すが、オレは一気に火炎増強で全速力で持ち上げる。


…うわ、結構重たいな、コイツ。


かなり手こずりながらもジャイアントコングを持ち上げて連れて行く。



「……すごい」


アルエが静かに呟く。

その戦いを見ていたマリアたちは放心状態になっていた。

この世界で脅威の存在の魔物とこの世界では

一度も見たことが無いゴールドアーマーの存在、それはマリアの心に深く刻まれていた。





オレは上空からジャイアントコングは宙ぶらりんで運んでいく。その間も抵抗しているためかなり腕に響いてくる。


…コイツ、少しはおとなしくできないのか。

まあ、できたら村なんて襲わないよな…。


…よし、ここら辺でいいだろう。


オレは村から離れた荒野に連れてきて、空中でハンマー投げのように荒野に投げ捨てる。そのまま勢いよく荒野の地面に落ちていく。


オレはロープをしまい、荒野の地に降り立つ。


「ここなら思いっきり暴れるな…」


オレは手のひらにいつでも炎弾を放てるように構える。

ジャイアントコングはオレに向かって吠えると手足を使って80キロ前後のスピードで迫ってくる。



オレも火力を使って距離を詰めていく。

ジャイアントコングは上から右腕を振り下ろしてくる、オレはそれを横に避けて左頬に一撃喰らわせる。


そのままよろめいていたが、態勢を立て直して、吠えながら左からラリアットをかましてきた。


オレはそれを防ごうとするが、吹っ飛ばされてしまう。すぐさま両足の火力で受け身を取り地面に着地する。


顔を上げるとすぐ目の前に拳がきていた。

オレはそれを避けるために後ろに下がりながら空中へと逃げる。


そのまま地面に拳が当たると地響きが起こり、亀裂が入る。


…おお、ジャイアントイノシシよりも強烈だなぁ…。


オレはその凄まじい力に感心していた。

この戦いがよほど楽しいのかオレは口元が緩んでいることに気づいた。


オレは拳を強く握りしめる。 

目を閉じて、深く深呼吸をする。ゆっくりと目を開けて……。



「……よし、行くぞ!」


オレはジャイアントコングに目掛けて迫っていく。

ジャイアントコングも吠えながらドラミングをしている。

どうやら向こうも気合いが入ったようだ。


第2ラウンドの火蓋が切られた。


荒野の荒れ果てた地で二つの影が戦闘を繰り広げる。ジャイアントコングが吠えながら腕を振り下ろす。単調的な攻撃だが、威力は充分にある。

だからオレはそれを受け止めずに避ける。避けたら今度はオレの炎弾を浴びせようとすると、奴はオレの攻撃パターンを学習したのか、跳びながら避ける。


だな最初から当てるつもりはない、本当の狙いはその間に距離を詰めて顔面に一撃を喰らわすこと。


ジャイアントコングの顔の中心に向かって炎弾を連続で放つ。

ジャイアントコングは避けきれずに命中。


顔に当たったことが腹が立ったのかさらに怒りがマックスに到達したように吠えながら、

真っ直ぐストレートにオレに攻撃してくる。


さらに攻撃を繰り出してくるがオレはそれを避けていく。


オレも負けじと炎弾を打つとジャイアントコングは自分の腕で防御する、しかし当たった瞬間、爆発音と煙が舞い上がる。

炎弾が当たった腕には大きな火傷の痣ができていた。


そりゃそうなる、なぜなら今放った炎弾は他のと違って、熱と威力を格段に上げたからだ。

今まで打っていたのはほんの子ども騙し、

これを打つための前フリをしたのさ。


かなり頑丈な魔物でも痛みやダメージはあるはずだ。


ジャイアントコングは火傷した傷を見ると、

怒りを露わにして吠えてくる。


オレは上空へ逃げるように飛んで、アーマーのステータス画面越しにジャイアントコングを見る。


…かなり魔力を消費したなぁ…。…もうあと何回飛べるかわからないし、ここで一気にケリをつけるか…。


オレはアーマーの左腕からロープを取り出す。

だがこれは巻きつけるために出したわけでは無い、また別の使い方があるのだ。


それはこのロープとともに造ったもう一つの隠し武器でジャイアントコングを確実に仕留める。


この隠し武器はもう完成していたから問題はないが、ロープを造っている途中で魔物が現れたとか言うから時間がかかったのだ。

オレだって無駄に遅れた訳では無い。

アーマーの装着は10秒もあれば充分、オレの地下作業場からローウェン村まで5分もあれば充分間に合うのだ。

オレはジャイアントの魔物と戦うには打撃や炎弾だけでは勝てないときも出てくる。


その対策としての隠し武器を今ここで満を持して使うのだ。



「……アーマー装備、オープン」


オレはステータス画面を端に追いやって別の画面を表示する。

その画面にはオレが造った武器が表示される仕組みにしている。

仕組みはまたの機会に話すとして、その中の

雷のマークを選択する。


雷武装サンダーアーマー、チェック」


するとオレのアーマーにビリビリと音を立てて、身体中に電気が発生している。

手にはロープを握りしめる。




「これで終わりにするぞ……」



再び、闘争本能が溢れ出してくる。


オレのアーマーの赤眼がビカンッと光る。

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