第2話 異世界転移

——オレは何もしないと思いますよ。


「…………………は?」


「それもそうでしょ、行ったところでオレに何ができますか、勇者なんてそんな面白くないものはやりませんよ」


「すごいね、ふつうは結構食いつくと思ったんだけど……」


女神は今までそういう人間には会ってきただろうがオレはそう簡単にいかない、だって現実世界でそれが身に染みたから。


「じゃあ、君は一体何になりたいの?」


女神はとうとう呆れた感じで言う。


「…だったら……」


オレは色々と考えを巡らす、どうせ異世界へ行くなら、なんかすごい力を持っていきたいという願望はあるが、それはつまらない。

もっとオレだけができる何かを……。

そこでふと頭の中に思い浮かんだモノがあった。


「……装備を作りたいな、特に武器とか」


そう、ただそれだけだ。


女神はまたキョトンとした顔でオレを見る。


「……それだけでいいの?」


「はい……」


「……本当に?」


「はい……」


「…うん、じゃあ、わかったわ」


オレはなぜそれを選んだか?

一度やってみたいと思った、それだけだ。


「それではトビさま、あなたを異世界へと転送いたします!どうぞ、お気をつけて!」




そうしてオレは異世界へと転送された。


——目が覚めると、そこは大草原だった。


「…どこだよ、ここ?」


見渡す限り草、草、草だらけ。

あの女神は一体どこに飛ばしたんだよ、


さて、どうするか、これから……。

前方には村が見える。そこへ行けということか?


「なんか面倒くさいなぁ」


と言いながらもその村へ向かって歩いていくトビだった。


村へ向かう途中も何も起こらず、少し歩き疲れてきたので休むことにした。


「はぁ、すげぇ面倒くさくなってきた。もうここで野宿でもしようかな……」


道の岩場に座り込み、一人で考える。

そもそも女神は一体オレにこの世界に転送さして何しようってんだ?


まあ、退屈なオレだから。天国なんてところじゃ似合わないんだろうな。


「…とはいえ、今更帰れないしな。…はぁ、

とりあえず歩こう」


またオレは歩き出した。


そしてしばらく歩いてようやく村に辿り着いた。


「はぁ、やっと着いた。なげぇな、ここまで来るのにどんだけ歩いたんだよ」


村を見渡すと平和という言葉か似合うぐらいにのどかだった。


子どもたちが外ではしゃいでいる。村の人たちも和気藹々と話していた。


オレはとりあえず腕を組んで考える。

こういうときは冒険者ギルドへ行って登録手続きをするべきだと、でも登録手数料かかるな、……行くか!


村の人に冒険者ギルドの場所を聞くと快く教えてくれた。



   —冒険者ギルド—


「ふーん、ここがそうか……」


それは村の中心に位置していて、大きな建物だった。

扉を開けて中に入ると、冒険者たちが賑わっており、男女問わず様々な職業の冒険者がいた。


オレはとりあえず受付へ行ってみる。

受付には美人な女性が笑顔で迎えてくれた。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。登録ですか?」


「はい、そうです」


「でしたら、先に登録手数料をいただきますね」


「はい、いくらですか?」


「銅貨十枚です」


……銅貨か、そういや持ってたっけ?


オレはポケットの中を探ると、ジャラっと音がする。

出してみると、金貨一枚、銀貨一枚、銅貨十枚があった。


…ちょうどピッタリ!これも女神のおかげか?


オレはその銅貨を出して冒険者の登録ができるようになった。


…よかった、ちゃんとした女神で…。


「では、登録料もいただきましたので、手続きの方に参りたいと思います。こちらに手をかざしてください」


受付のお姉さんは何か大きな物を持ってきた。

その物に手をかざすと青く輝き出して目の前に画面が出てきた。


「これは何ですか……?」


「これはあなたのステータスです。…えーっと、お名前は、トビさんですね。ステータスはまあ、平均ですね」


「まあ、そうでしょうね」


このお姉さんは物事をズバッと言う人だな。


「職業は…、錬成術師ですね、あとは鍛治スキルもありますし、道具屋などを開いたらすごく稼げますよ」


オレは…へぇー、そうなんだ…、としか思わなかった。


……そんなにすごいのか?


オレはカードを受け取り見ると、Lv.1と書かれていた。


まあ、最初からすごいわけじゃないし、オレは装備を作るという目的でこの世界に来たから別に落ち込むことはない。


「それではトビさん、これからもギルドをご贔屓に!頑張ってください」


受付のお姉さんがまた笑顔で送り出してくれる。


さて、これで登録も済ましたしあとは、宿だな。


いや、その前に金をどうにかしないとなぁ。

雇ってくれるとこあるかな?


オレはとりあえず働けるところを探すことにした。

しかしこの村は平和そのものだな、何か邪悪な物あるわけでもなく、ただ一日がゆっくりと過ぎていくだけ、これじゃ日本にいたころと変わらないかもな。


そう思いながら歩いているとふと誰かにぶつかった。


「きゃあ!!」


「……いってぇ、誰だよ?」


「すいません、大丈夫ですか?」


「…ああ、大丈夫ですよ……」


オレはその相手の顔を見たときに固まってしまった。

その相手はオレには到底縁のない美少女という女の子がいたから。心の中に小さな炎が灯る。


「ごめんなさい!急いでいて前を見てなかったので、本当にごめんなさい!それじゃ、失礼します!」


女の子はそのまま走り去ってしまったが、

オレの心の中に深く刻み込まれた。

一際目立つ銀髪、白く透明な肌、欠点がない完璧な綺麗な顔立ちをして、特に印象に残ったのは宝石のようにルビー色に輝く紅い瞳、

そしてか細く優しい声をしていた。


オレはしばらく固まっていたが、すぐに我に返る。でも忘れられない日本にいたころには

見たことのない美少女だった。


オレは放心状態に近かったかもしれない。


今も胸のドキドキが抑えられない。

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