ゴールドアーマー〜異世界でオレだけの装備をつくる〜
@TOVIrock
第一章 魔女編
第1話 不慮な事故
—オレの名前はトビ。正式な名前はあるけど
めんどくさいから言わない。オレは休日を利用してエアガンを買いに来ていた。今日は給料日だから奮発して買いすぎてしまった。
東京の街のど真ん中を一人歩きながら思う。
…彼女ほしい。
だがそんなの無理に決まっている。なぜなら
オレはただいま二十五才、社会人だ。
学生の時はリア充という鬱陶しい奴はいた。
オレが昼メシを食ってるときに隠れてイチャイチャしてたし、たとえばあの子可愛いと恋をしても他の男の彼女か、その彼女は別の男が好きというなんともお決まりの展開で腹が立つ。社会人になれば綺麗な女性と巡り会えるかもと思ったがそんなことはない、日々仕事に勤しむだけで彼女のかの字もない。
それに職場は暑苦しい男しかいないし、女性に至っては熟女しかいない。
オレが大口を叩くなというのならオレにこんな理不尽な環境を作った神様に文句を言うべきだ。
よく学園ものストーリーでは可愛い女の子が
密かに想いを寄せている相手は実は俺はだったとか理想の展開などまずないし、それに平凡な人生を送ってきたオレは単なるモブかもしれない。
別に勉強も運動も飛び抜けてすごいってわけじゃないし、顔もいいわけじゃない、何か特別な才能もあるわけじゃない。ではゲームがすごく強いのかってわけでもない。
では陰キャかと言われたらそうでもない。
では陽キャかと言われても違う。
普通の中間の平均的な人生の模範的な存在。
まあ、どっちにしろオレにモテ期は来ない。
………一生。
なので諦めてモブになりきってこの時代を乗り切ろう。女の子とは縁のないオレだ。
そう思って横断歩道を渡ろうとすると、横から車が走ってきている。
ふと顔を上げると歩道の信号は赤だった。
…あ、やべ、信号無視しちゃった。
けたたましくなる車のラッパの音と急ブレーキをかける音が同時に聞こえる、そしてオレの体に体当たり、オレは吹っ飛ばされた。
空中に舞い上がり、地面に叩きつけられる。
視界が真っ暗になる。
耳にサイレンの音や人の叫び声が聞こえてくるが別に気にしない。
どうせ死ぬから、不思議とオレは怖くなかった。
この世界にうんざりしていたからか。
まあ、次に生まれ変わるときもうちょっと裕福な家庭に生まれてぇな。
意識が遠のいていく。
ああ、もう死ぬのか。でもせめて彼女の一人くらい欲しかったなぁ。
「起きなさい、早く目を覚ましなさい」
…ん?……っ、だれ?
オレの耳元でそっと誰かが囁いている。
「起きなさい、早く」
ふと目を開けるとそこは雲の上だった。
どこまでも続くように広がる青い空。
白くもふもふした雲。
……なるほど、死んだのか。
「ここは天国だな。よっしゃ、あとはどっかに生まれ変わるのを待つだけだ」
オレはそう言ってゴロンと寝転んだ。
「ちょっと!何寝てるの!」
オレは鬱陶しくて目を開ける。
「…ったく、誰だよ」
「何よ、そんな言い方ないじゃない!」
オレは声のする方へ顔を上げるとそこにいたのは絶世の美女と言える金髪の女性が立っていた。
「………あんた誰?」
そう言うとその女性は子どものように頬をぷくっと膨らませてオレを睨む。
「誰って、失礼ね!女神よ、女神!」
「ああ、女神ね。じゃ、おやすみ……………
……、女神!?」
オレはまた寝転んで寝ようとしたがその言葉に驚いて飛び起きた。
「やっと、わかったの。もう、遅すぎるよ!」
女神と名乗るその女性はニコリとオレに微笑みかけた。
「……えーっと、どういうこと?」
オレは混乱した。
女神というものの存在は知っているが実際に見るのは初めてだ。
「ホントにいたんだな……」
「そりゃいるに決まってるでしょ!」
女神はなぜかプンスカと怒っている。
「それでその女神がオレに何の用ですか?」
すると女神はコホンと咳払いをしてからオレを見る。
「トビさま、あなたは残念ながらお亡くなりになりました」
「ああ、そうみたいだな」
オレがあっさり答えると女神はキョトンとした顔をする。
「あれ?驚かないの?」
「まあ、あんだけ勢いよくぶつかったんだ
生きてるほうが不思議だと思うけど…」
「まあ、それは、そうよね」
女神は自分が想像した反応と違ったから少しびっくりしたのだろう。
「それではトビさま、あなたはこれから自由に選択できます」
「……選択?」
「はい。これからあなたは天国へ行き静かに暮らすか、もしくは別の世界で生きるか、選ぶことができます」
「へぇー、そうなんだ」
「もちろん記憶や肉体はそのままで送ることができます」
「へぇー」
「そして何と言っても別の世界では魔法が使えるのですよ!」
女神はそう言いながらウインクしてきた。
「へぇー」
「………ねぇ、なんでそんなに冷静なの?」
女神はがっかりした様子で言う。
「いや、すごく良さそうだなぁ、とは思ってますよ」
「だったら……」
「でも、その世界へ行ってもオレはおそらく何もしないと思いますよ」
「どういうこと?」
女神の頭の中はチンプンカンだった。
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