6
「―――だから、私は‥‥‥戦いたくない」
意外なことに、死唄が語る間、聴ノは相槌を打つだけで私語を挟まなかった。
うん、うん、と静かに死唄の告白を聞いていた。
戦いたくないと話終えて、一息つくと、緊張していたのか肩が軽くなった。
「ねえ、しおん。ボクも見ていい? 大会映像」
「‥‥‥っ?」
「ボクさ、キミがここに来るって言われたときに、一応映像データはもらってたんだ。でも、せっかく初対面なんだし、ボクが先にキミのことを知っているっていうのもなんか違う気がしてさ。だから見なかったんだよね」
「なら、なんでっ‥‥‥?」
見ていないのなら、今の話を聞いて尚更みたくなる。というのは、人間心理の基本なのかもしれない。けれど、聴ノはそこまで空気の読めない人間なのか? だったらバカみたいだ。話さなければ良かった。
「あ、今こいつ、空気読めないバカとか思ったでしょ?」
「‥‥‥」
「図星なんでしょ!!」
「違うよ、ボクはそんな単純な思考で見たいっていったわけじゃないよ。ボクは、自分の
‥‥‥‥‥‥ちゃんと、見ないでほしい。自分だって今まで目をそらし続けてきた。それを、この少女は、
「しおん、ボクをその、『彼』と一緒にしないでほしいな。もちろんその人のことをどうとかじゃないけど。ボクはボクだ」
「聴ノ‥‥‥」
そういうと聴ノは、イマジネクトを操作した。いくつかホロウィンドウに表示されたボタンを押すと、一つのデータファイルがポップアップする。
まさか、
「聴ノ待って!!」
死唄は叫ぶ。しかし聴ノの指先はすでに、ウィンドウに浮かぶ、ボタンをタップした後だった。
ポン、という効果音とともにホロウィンドウで映像が再生される。
遅かった。
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